その一

クラスメート達はみんなおキヌは優しいとは言うが、いざ自分があの不良と仲良くしたいかと言えば積極的な人間は皆無だった。

悪い人間じゃないのは知っているが、一言で言えばめんどくさい人間なのだ。

同じようにめんどくさい人間だと思われてるかおりなんかは、まだ優等生なのでみんなそれなりに対応するが劣等生で不良の魔理に関わっていいことがあるとは思えない。

それでもおキヌのおかげでだいぶクラスに馴染んだんだが、困った時に助けてくれるほど親しい友人は居なかった。


「先生に相談してもダメですし、美神さんや横島さんも……」

かおりに相談してもいい返事がないことでおキヌは落ち込むが、どうやらおキヌは教師や令子や横島にまで相談したらしい。

教師に関しては担任の鬼道に相談したが、そもそも授業態度が良くない魔理に何を言っても無駄だろうと言われてしまう。

ただ魔理が態度を改めて真剣に学びたいならばいくらでも力にはなるが、現状で教師として言えるのは授業態度を改めるように言うことが先だのことなのだ。

そもそも今まで何人もの教師が魔理の態度や服装や髪型を注意したが、全く聞かなかった過去があるので教師から手を差し延べるほど教師は暇ではなかった。


令子と横島に関しては、本人が自分で道を見つけるだろうとしか考えてない。

令子に関しては学校に馴染めない魔理に割と同情的だが、本人がタイガーと修行してるなら見守るべきだと言うだけでそれ以上は自己責任だとも言っていた。

加えてあのタイプは型に嵌めても上手く行かないだろうとも言っており、放っといても横島のようになんとかなるくらいにしか考えてないのだ。

横島に至っては令子の意見に頷くだけで特に意見もなにもない。

元々令子も横島も型に嵌められるのが嫌いなので魔理の心情は理解するが、後は自己責任で頑張れくらいにしか考えてなかった。


「氷室さん、別に戦闘技術に特化するのが間違いではないんですよ。 雪之丞のようにそれで魔族と戦えるほどになれば十二分にGSとして大成するでしょう。 言い方は悪いですが小さく纏まるばかりが方法ではないですから」

あまりに落ち込むおキヌに、かおりは仕方なくため息混じりにオカルト業界における可能性を語り始める。

正直なところ魔理のやり方が必ずしも間違ってる訳ではない。

実際対人戦闘に特化してるのは魔理の長所だし、それをそのまま伸ばすのも一つの方法である。

尤も不良崩れの魔理にお金を払って依頼を頼む人間が居るかどうかは別問題であり、それに日本でGSになる為の師匠が見つかるかも別問題だとは思うが。


「海外に行けば実力次第では特化した霊能者も活躍出来るようですし、無理矢理私や氷室さんの価値観を押し付けるのは問題ではなくて? 本当の友達ならば信じて見守るのも必要かと思いますわ」

お節介はおキヌの長所であり短所だなとかおりはシミジミと感じつつ、好きにさせればいいと言い聞かせていく。

実際魔理のような中途半端な人間が海外に行って成功した例など聞いたこともないが、可能性がない訳でないのは雪之丞を見てればわかる。



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