その一

東京に戻った一同はそれぞれの生活に戻っていた。

共同除霊でおキヌが考えたかおりと魔理に横島をきちんと知ってもらう計画は、成功とも言えるし失敗とも言える。

かおりと横島の関係が変わった原因をおキヌは気にしてはいるものの、以前のような嫌われるよりは前進したと考え受け止めていた。

まあ普通に考えて雪之丞という恋人が居ればこそ、横島とかおりが友人以上にならないとの思い込みも多分にあるが。


一方の魔理は横島どころの騒ぎでは無くなったと言うのが現状だった。

あの除霊以降、彼女は横島の名前を全く口に出さなくなったのだ。

あれほど見下し軽蔑していた横島云々よりも、自分自身がまともに除霊出来ないことがよほどショックだったらしい。

結局は魔理にとって横島はおキヌの想い人であって、それ以上興味がないのが現実だった。


「弓さん、どうしましょう?」

「どうって言われましても……。 努力してるならいいのでは?」

そんな除霊旅行から帰って三日が過ぎた頃、おキヌはかおりと一緒に帰りながら魔理の件を相談していた。

あれからも魔理は学校には当然来ているが、学校では不機嫌なオーラを撒き散らして学校が終わればさっさと帰ってしまうようになっている。

おキヌはそれとなく話し掛けたりフォローしたりするが、どうも放課後にタイガーに頼んで霊能の修行をしてるらしい。

修行の内容まではイマイチ掴めてないが、おそらくは向こうでもやっていた不特定多数の悪霊と戦う修行だろう。

おキヌは学校での態度も魔理の修行の内容も微妙に間違ってるのではと心配しているが、かおりはそこまで魔理にお節介する気はない。

実は横島の影響からか、かおりは除霊の件から魔理にダメ出しをしなくなっている。

元々かおりとしては友人として最低限の苦言のつもりだったが、言っても嫌がるだけで割に合わないと気付いてしまったらしい。

別に改めて嫌いになった訳ではないが元々おキヌが居たから成立していた関係でもあり、根本的に合わない部分が多かったのが実情だった。

加えておキヌはあまり気にしないが霊能科やかおりの出身中学の人間は、札付きの落ちこぼれである魔理と関わるかおりを笑っている者が居ない訳でもない。

魔理のやる気と根性は認めるが、教師ですら匙を投げてる魔理に深入りするのが馬鹿馬鹿しくもなっていた。


「あのままじゃ、よくないですよ」

「それは本人が一番分かっていると思いますわ」

結局魔理はタイガーしか頼れる人が居なかったようだが、魔理に必要な基礎知識や技術をタイガーが教えれるとはおキヌには思えない。

クラスのみんなとも仲良くして欲しいようだが、そもそも魔理はおキヌが居ないとクラスから浮いてしまうのが現実なのだ。

正直かおりもさほど人付き合いが上手い方ではないので人のことは言えないが、そもそもの問題としてクラスみんなが仲良くなんて小学生のようなことを考える高校生はあまり多くない。



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