その一

結局魔理はおキヌの作業を見てるしか出来ることはなかった。

戦力外扱いに不満げだったが、実際彼女は細かい後始末はほとんど覚えてないし霊力も尽きている。

そんな訳で魔理を除く全員で手分けして建物の中やその周囲などを確認して、除霊残しや原因の再確認から開始する。

除霊前にも出来る限り調査はしたが、実際に建物内や建物に近い場所の細かい調査は出来なく報告書には事後調査の報告が必要だった。

今回はかなり割引した金額になったが、美神事務所の名前で受けた仕事なだけに最後まで手を抜く訳にはいかない。


「やっぱ中は浄化しなきゃダメだな」

さて建物の浄化についてだが、作業自体は比較的簡単だった。

浄化のお札を必要な場所に張るだけなのである。

もちろん値段もピンからキリまであり効果も値段によって変わるだけに、難しいのは浄化の見極めだ。

ちなみに横島は文珠で代用が可能でありかおりも浄化の術を別途使えるが、今回はあくまでもオーソドックスな手法ということで使ってない。


「建物を解体するなら必要ないのですが……」

「東側半分は解体するらしいから、細かい浄化は要らんだろ。 西側を中心に浄化すればいいよ」

ピートや雪之丞達も調査と浄化をしているが、横島もかおりと一緒に調査と浄化をしていく。

実はこの旅館の旧館の今後については、露天風呂があり比較的建物の老朽化がマシな西側は地元の人々が集会場として再び利用したいとの意見があるらしい。

一度老朽化から使用を止めたのだが、全て解体して更地にしてしまうくらいなら地元の人間で管理出来る範囲で修繕して使いたいと旅館側が頼まれてるようだった。


「地方だとGSも人付き合いが大変らしいですわ。 いろいろしがらみも多いそうですし」

「へ~」

「父の弟子が田舎の寺の住職でGSもしてますが、東京とは別の仕事のようだと言ってましたわ。 断れない依頼も多く赤字になることも珍しくないとか」

すでに使わない旧館の扱い一つとっても地元の意見を無視出来ない旅館は大変だと感じる横島だが、かおりはGSも地方だと大変なのだと横島が知らない一般GS達の苦労を語っていく。

それは令子やエミのような一流にはなれなかった者達の苦労話だったが、大半のGSはそちら側に属するのだ。

まだ普通にGS事務所を開くならばいいらしいが、先祖代々続くお寺の住職などがGSをやると断れない依頼が増えてしまい普通の住職よりも貧乏になることもよくある話らしい。

かおりの実家は寺なため、寺社系のGSの苦労はよく聞くようである。


「GSも儲かるのはごく一部だってか。 世知辛い世の中だな~」

自身が知らないGSの現状を聞きテンションが落ちる横島だったが、それだけGSが難しいのだと考えると自分には無理だろうなとの印象が強く残ることになる。

まあだからと言って現実的にGSを辞めるかと聞かれれば決断など出来ないだろうが。

ただしがらみや金に追われる仕事は嫌だとは単純に考えていた。


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