その一

「低級霊に対応出来ないって……」

かおりの予期せぬ言葉には横島のみならず雪之丞とピートも驚き固まっている。

昔の横島ならいざしらず、あそこまでやる気の魔理が低級霊に手間取るとは流石に予想してなかったらしい。


「一文字さん対人戦闘は得意なんですけど、普通の除霊自体は……」

驚き固まる横島達におキヌでさえ、魔理は普通の除霊が苦手だと言い切ってしまう。

実のところ魔理が得意なのは霊能力を使った喧嘩であり、除霊として見るとお寒い限りだった。

恐らく中級程度の悪霊が一体ならば魔理が活躍出来るが、今回のように弱い悪霊だと魔理の霊能力では反応すら出来ない可能性が高いのである。

能力的には雪之丞も対人戦闘に特化しているが、魔理はそれの劣化版と言えるだろう。


「えーと、どうする?」

「俺は嫌だぜ」

「僕も人のフォローするほど余裕がある訳では……」

かおりとおキヌの言葉から魔理はフォローする人間が必要だとの結論に達するが、雪之丞もピートも魔理のフォローはやる気がないらしい。

もう少し素直ならば双方共に力を貸すのだろうが、雪之丞は先程の特攻服の件で見限ってるしピートもあの手のタイプは得意ではないようだ。


「彼女の実力を考えれば外で見張りでもして頂くのが適当なのですが」

「それは可哀相ですよ。 一文字さんも楽しみにしてたんですから」

横島達三人はフォローする気はないらしくタイガーでは少し不安だとの話になるが、かおりは純粋な実力から考えると除霊に参加させる方がおかしいと言う。

しかしおキヌは魔理の気持ちを理解しており、参加して経験を積ませたいようだった。


「私が一文字さんとタイガーさんと一緒にやります」

結局に魔理のフォローをすると言い出したのはおキヌである。

おキヌ自身は自分の実力に不安があるようで自信なさ気ではあったが、魔理を見捨てるようなことが出来ないのが性分らしい。


「おキヌちゃんしか居ないか。 一文字さんが他人の指示に従うの他の人じゃ無理そうだし」

魔理をフォローすると決めたおキヌに横島達も少し考えるが、おキヌとタイガーの組み合わせは満更悪い訳でもない。

おキヌもタイガーも今回程度の除霊には慣れているし、魔理をコントロール出来る者は他にいないのだ。


「それじゃ俺達はどうする?」

「じゃんけんでいいだろ」

その後残りの横島達をどうするか話し合うが、こちらは誰が誰と組んでも問題はなくじゃんけんでコンビを組み二人ずつに分かれようということになった。

正直室内で四人でチームを組むのは少し人数が多く、三人か二人が動きやすい。


「俺は別に外で見張りでも一向に構わんのだが」

途中横島は自ら見張り役を買って出るが、当然却下され除霊に参加させられる。

その結果横島と組むのはかおりとなり、ピートと雪之丞が組むことでようやく人員の配置が決まった。

細かな方法については流石にタイガー達が来てから決めることになるが、最大の懸案だった魔理のフォローが決まり横島達はホッとしていた。


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