その一

その後挨拶回りを終えた横島達が調査を続けるピート達に合流するが、予想外に重苦しい空気に横島は面倒そうな表情を見せおキヌは心配そうになる。


「こっちは終わったぞ」

「僕たちの調査はもう少しかかります。 悪霊の強さは依頼通り低いですが数が予想外に多いですよ」

何かあったかと感じた横島だが、面倒なのでスルーして仕事の話に専念する。

横島達は挨拶回りで聞いた話を話しピート達は調査の状況を話すが、当然専門的な調査の結果は事前予測とは違うものになっていた。


「ここは土地や建物の霊的汚染が進んでますし、除霊後に浄化も必要ですわ」

「除霊と浄化で東京だと、ざっと見積もって二千万ってとこか?」

「地方の依頼だと東京より相場が安いはずですわ。 半値か下手すると三分の一ということも」

互いに報告を終えると横島達も調査を手伝うが、現場の土地はすでに陰気を溜めており霊的汚染が進行していた。

かおりは除霊に加えて土地の浄化も必要だと言うと横島は大まかな見積もりを口にするが、その金額にかおりは異議を唱える。

基本的に除霊料金は土地や建物の評価額以上にはなりにくいのが現実だった。

地価の高い都心部ならばともかく地方だと除霊料金の相場は相当安いらしい。


「だとすると七百万から一千万か。 しかしこの規模でその値段だと普通に除霊すりゃ赤字だろうに」

「採算の合わん除霊はモグリのGSに回るからな。 この手の依頼だと浄化はしないし、除霊したら原因になりそうな建物を壊して放置だよ」

かおりの意見から地方の相場を知り採算を考える横島だったが、そんな横島に地方の現実を語ったのは魔理の件以来無言だった雪之丞である。

実際地方には採算が合わずに放置されてる霊障がよくあるが、そんな依頼はモグリのGSに回るらしい。

無論プロのようにしっかりと浄化などせずに、最低限の仕事しかしないらしいが。


「七百万かぁ、今回は調査で終わりかもな」

淡々と調査を続けながらもこの後のことを話す横島達だったが、今回の除霊の料金を考えると調査で終わる可能性が高いことにため息をつく。


「なあ、七百万って高すぎるんじゃないか?」

「この規模の除霊ですと仕方ないんですよ。 この地方の他のGSとか美神さんの他のお客さんのこともありますから、極端な値下げは出来ないんですよ」

一方一人事情を理解してないのは、やはり魔理だった。

二百万の予定が二千万に変わり、最終的には七百万がギリギリだと話す横島達を信じられないように見ている。

ただお金に執着がないおキヌですら、相場を守らなければならないのは理解している。

令子の名前とブランドでする仕事だけに、安易な値下げは出来ないのだ。

唐巣のように貧しい人を相手にするボランティアなら構わないが、勝手な値下げは相場の値崩れや他の客への影響など問題が多い。

まして横島達は美神令子の名前で除霊してるので、決して責任は軽くはないのである。


「調査報告書には千五百万で書いとくか?」

「それがいいと思いますわ。 美神お姉さまの名前で受けた以上は基本料金が一千万を下回ると、他のGSに怨まれますわ」

結局横島達は基本除霊料金を、千五百万にすることで落ち着く。

令子が査定するよりは安いが地方の相場の範囲内では高い方であった。



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