その一

その後一行はバスに乗る前にファミレスで少し早めの夕食にすることになる。

ちなみに移動費や食事代は令子が事前に経費として、おキヌに纏まった金を渡していた分から払うことになっていた。

移動費はともかく食事代は自腹でもいいのではとの声もあったが、もし失敗したり調査のみで終わった場合にはタダ働きになる可能性があるため令子が経費にすると決める。

ただこの件に関しては横島やおキヌの給料の話をあまりされたくない令子の側の裏事情もあった。

そもそも横島の時給は相変わらず255円だが、おキヌは平均的な見習いの給料をもらっている。

令子とすればそれを横島には知られたくないし、同時に横島の時給をかおりや魔理に知られるのもあまりいいことではない。

令子が弟子を違法賃金でこき使ってると下手な噂になっても困るし、横島がおキヌとの賃金格差や見習いの平均的な給料を知り騒ぐのも困るのだ。


まあGS業界には何年も無報酬で修行をさせる霊能者が現代においても存在するので横島の時給もそれなりに言い訳は出来るが、正直あまり体裁のいい話ではない。

それに付け加えるなら無報酬の修行は基本的に衣食住を保障するのが原則なので、横島とはまた状況も違うのだ。

結果的に令子は下手な話をされないようにと食事代も経費に加えていた。

正直そこまで気にするなら横島に最低限の給料を払えばいいのだろうが、それが出来ないのが美神令子なのだろう。

実際のところ横島はおキヌとの給料の差には気付いていることなど、令子は知るはずもない訳だし。



「よく食べるな」

さてファミレスに入り食事を取ることになったが、食事代が経費なことから横島を始めタイガーや雪之丞は何の遠慮もなく食べたい物を頼んでいく。

その姿に魔理は少し微妙に不満そうな表情を見せるが、流石に言葉に出して批判まではしないらしい。


「報酬は必ず貰える訳ではありませんからね。 正直食事代を経費にして頂いたのは助かりますわ」

魔理は食事代を経費にするのは反対なようだが、かおりは素直に喜んでいる。

この差に関しては基本的に報酬を貰えるだろうと考える魔理と、貰えない可能性も結構あると考えるかおりの差だろう。


「どうせなら食べた金額を報酬から引く方が私は平等だと思うけどな」

「細かい経費をみんなで平等に分けるとの約束は、どちらかと言えば私や貴女に有利なのですよ。 個々が使った経費を報酬から引くならば、免許や能力や経験による報酬の優遇が必要になります。 そうなると一番報酬が安くなるのは一文字さんですわ」

かおりが食事代の経費化に賛成な意見を口にすると、魔理は反発するように報酬から食事代を引くべきだと言い出す。

しかし経費と報酬の平等化は、どちらかと言えばかおりや魔理に有利な条件だった。

本来ならば免許持ちの横島やピートは優遇しなければならないし、能力を攻略すれば雪之丞やおキヌも優遇される。

働きにより報酬や経費を変えるならば最終的には経験もなく能力的にも劣る魔理が一番報酬を貰えなくなることを本人は気付いてないらしい。


「相変わらず嫌みなやつだな。 報酬分の仕事は必ずするよ」

かおりの遠慮ない指摘に魔理はやはり反発するが、以前に横島に言われた影響からかかおりもそれ以上は何も言わなかった。



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