その三
結局、特に波乱もなく、雪之丞はGS免許を取得していた。
応援のし甲斐はないと言えるほどあっさりとしたもので、横島にはいい勉強になるだろうとかおりは思う程度だ。
タイガーに関しても今回は普通に合格していた。まあ一般的なレベルではこんなもんだろうという唐巣の言う通りとなった。
「そんじゃあ、雪之丞とタイガーの合格を祝って乾杯!」
試験も無事終わったこの日、横島の部屋ではGS試験に合格した雪之丞とタイガーに、ピート、おキヌ、魔理、それと愛子も加わって免許取得のお祝いパーティーをしている。
料理は主にデリバリーのピザと、かおりとおキヌと愛子で数品作っていて、料理の出来ない男性陣と魔理は騒いでいるだけだったが。
横島の音頭で乾杯をした一同は、料理に舌鼓を打つが当然飲み物はノンアルコールである。
横島はそこまで気にしないが、好き好んで酒を飲む習慣もない。
あとはかおりとおキヌが真面目なことと、六道女学院の生徒が飲酒騒動などシャレにならないので当然であるが。
「片付いていますね」
部屋は結構綺麗に片付いていて、ピートはそんな部屋に信じられないようである。
「今のところはなぁ。ハウスクリーニング頼んでいるしさ」
まあおキヌやほかの面々も同じく驚いているらしいが、横島が急に綺麗好きになった訳でもマメになった訳でもない。
かおりが週の半分ほど来ることで横島も多少散らかさないように努力はしているが、かおりの勧めでハウスクリーニングを頼んでいることと、かおりがマメに片付けている為である。
「こう言っちゃあなんだが……、喧嘩しないのか?」
片付けている理由は主にかおりだと自覚のある横島は彼女に視線を向けると、二人は見つめ合いなんとも誤魔化すような笑みを見せた。
そんなアイコンタクトをする横島とかおりに、雪之丞は聞きにくいようなことを単刀直入に聞いた。
この男はあまり遠慮とか配慮とか考えるタイプではないらしい。
「喧嘩したか?」
雪之丞の問い掛けに横島は自覚がないのか、考え込んでかおりのそのまま問い掛けた。
「していませんわね。横島さんはあまり自分の意見を押し通すことはしませんし」
「だよなぁ。話せばわかるし」
まあ意見の食い違いはあるし、些細な言い合いはある。ただ、それが喧嘩と言えるかといえば、言えないとふたりは考えていた。
特に横島親子のように過激なスキンシップもないのだ。横島からすると平和な日常であり、かおりも日常においてすべてが霊能と寺だけだった暮らしと比較すると、平和で普通の日々であった。
どちらかといえば横島が引く形が多いが、かおりは横島の性格を理解して動くので必然的に喧嘩になる前に解決することが多い。
雪之丞とすれば我の強いかおりといい加減な横島が、どんな様子なのか気になったのだろう。
「横島さん、優しいんですよ。見た目以上に……」
とはいえ理解出来ないと言いたげな雪之丞に答えたのは、おキヌだった。
彼女は知っている。令子ですら横島に甘えていた部分があったことを。
人を寄せ付けず己の人生を歩んでいた令子が、曲がりなりにもかおりを受け入れたのも昔では考えられないことだった。
おキヌ自身は横島に対する気持ちの整理は付けているつもりだった。
ただ、周りはどう反応していいかわからず、おキヌの言葉に少し静まり返ってしまう。
「気を付けないと駄目ですよ。弓さん。横島さんは女の人には優しいから」
「ちょっとおキヌちゃん!?」
おキヌもそんな周りの空気を理解したんだろう。少し笑いながらかおりにアドバイスすると横島が慌てた。
「ええ、そうですわね。気を付けたいと思います。私のことまで心配してくれた人ですし」
もっともかおりはそんな横島の性格を理解していた。
それほど親しい訳でもないかおりのために、自分が泥を被って心配してくれた横島が他の女性にも同じことをするのではとの不安はあったのだ。
自分がモテないと思う横島は、そんな心配をされているとは知りもしないが。
応援のし甲斐はないと言えるほどあっさりとしたもので、横島にはいい勉強になるだろうとかおりは思う程度だ。
タイガーに関しても今回は普通に合格していた。まあ一般的なレベルではこんなもんだろうという唐巣の言う通りとなった。
「そんじゃあ、雪之丞とタイガーの合格を祝って乾杯!」
試験も無事終わったこの日、横島の部屋ではGS試験に合格した雪之丞とタイガーに、ピート、おキヌ、魔理、それと愛子も加わって免許取得のお祝いパーティーをしている。
料理は主にデリバリーのピザと、かおりとおキヌと愛子で数品作っていて、料理の出来ない男性陣と魔理は騒いでいるだけだったが。
横島の音頭で乾杯をした一同は、料理に舌鼓を打つが当然飲み物はノンアルコールである。
横島はそこまで気にしないが、好き好んで酒を飲む習慣もない。
あとはかおりとおキヌが真面目なことと、六道女学院の生徒が飲酒騒動などシャレにならないので当然であるが。
「片付いていますね」
部屋は結構綺麗に片付いていて、ピートはそんな部屋に信じられないようである。
「今のところはなぁ。ハウスクリーニング頼んでいるしさ」
まあおキヌやほかの面々も同じく驚いているらしいが、横島が急に綺麗好きになった訳でもマメになった訳でもない。
かおりが週の半分ほど来ることで横島も多少散らかさないように努力はしているが、かおりの勧めでハウスクリーニングを頼んでいることと、かおりがマメに片付けている為である。
「こう言っちゃあなんだが……、喧嘩しないのか?」
片付けている理由は主にかおりだと自覚のある横島は彼女に視線を向けると、二人は見つめ合いなんとも誤魔化すような笑みを見せた。
そんなアイコンタクトをする横島とかおりに、雪之丞は聞きにくいようなことを単刀直入に聞いた。
この男はあまり遠慮とか配慮とか考えるタイプではないらしい。
「喧嘩したか?」
雪之丞の問い掛けに横島は自覚がないのか、考え込んでかおりのそのまま問い掛けた。
「していませんわね。横島さんはあまり自分の意見を押し通すことはしませんし」
「だよなぁ。話せばわかるし」
まあ意見の食い違いはあるし、些細な言い合いはある。ただ、それが喧嘩と言えるかといえば、言えないとふたりは考えていた。
特に横島親子のように過激なスキンシップもないのだ。横島からすると平和な日常であり、かおりも日常においてすべてが霊能と寺だけだった暮らしと比較すると、平和で普通の日々であった。
どちらかといえば横島が引く形が多いが、かおりは横島の性格を理解して動くので必然的に喧嘩になる前に解決することが多い。
雪之丞とすれば我の強いかおりといい加減な横島が、どんな様子なのか気になったのだろう。
「横島さん、優しいんですよ。見た目以上に……」
とはいえ理解出来ないと言いたげな雪之丞に答えたのは、おキヌだった。
彼女は知っている。令子ですら横島に甘えていた部分があったことを。
人を寄せ付けず己の人生を歩んでいた令子が、曲がりなりにもかおりを受け入れたのも昔では考えられないことだった。
おキヌ自身は横島に対する気持ちの整理は付けているつもりだった。
ただ、周りはどう反応していいかわからず、おキヌの言葉に少し静まり返ってしまう。
「気を付けないと駄目ですよ。弓さん。横島さんは女の人には優しいから」
「ちょっとおキヌちゃん!?」
おキヌもそんな周りの空気を理解したんだろう。少し笑いながらかおりにアドバイスすると横島が慌てた。
「ええ、そうですわね。気を付けたいと思います。私のことまで心配してくれた人ですし」
もっともかおりはそんな横島の性格を理解していた。
それほど親しい訳でもないかおりのために、自分が泥を被って心配してくれた横島が他の女性にも同じことをするのではとの不安はあったのだ。
自分がモテないと思う横島は、そんな心配をされているとは知りもしないが。
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