その三

さて四月も下旬になると年に二回のGS試験の日となっていた。

横島とかおりは雪之丞とタイガーが出場することもあり、応援というか見物に来ていた。


「みんな真剣っすね。」

「当然ですわ。人生が掛かっているんですから。」

横島がGS試験を受けて二年が過ぎている。

ただの荷物持ちの素人だった横島も見習いGSとなり初めて訪れたGS試験の会場には、少し思うところがあるようだった。

横島自身はGS免許を自分の力で取得したとは今も思ってない。

小竜姫より授けられた心眼により取らせてもらったというのが本当のところで、懐かしくもあり胸が痛くなる思い出でもある。

加えてかおりと付き合うようになって初めて知った事実も多い。

令子は天才であり、横島は認めないだろうが横島もまた天才だった。

周りで試験を受ける受験生達の様子を見ると、自分がいかにいい加減だったかを今なら痛感出来ている。


「もう一回、自分の力で受けてみたい気もするなぁ。」

「相手が可哀想ですわ。六道女学院の生徒が一般的には優秀な霊能者なんです。」

心眼の助けを得ずに自分の実力を試してみたいと、少しらしくないことをつぶやく横島であったが、かおりは少し引き攣った表情をしていた。

横島が自分の実力を正確に理解するには案外いい考えなのかもしれないと思うが、ほかの受験生にとってはいい迷惑でしかないと思う。

本気になれば人間では勝てる相手が居るのかすら怪しい横島の相手は、令子や雪之丞でなくば務まらないだろう。


「俺の場合は心眼に頼りっきりだったから……。」

「霊具を使い、式神などと共に受験するは珍しくありませんわ。ルールの中でなら何をしても勝つことを求めるのがGS試験ですので、横島さんの場合でも問題はありませんわよ。」

過去を恥じるというつもりもないが、心眼を犠牲にしたことだけは後悔しているかもしれない。

横島自身も流石にここの受験生よりは強い自覚があるが、それでも未だに信じられない部分があるようだ。


「やあ、二人も来たんだね。」

「どうも。雪之丞はどうっすか?」

「合格はするよ。流石にレベルが違うからね。」

少しらしくない様子でしんみりとする横島とかおりは会場の中に入るが、そこで出会ったのは雪之丞の師匠となった唐巣であった。


「そんなもんすか?」

「君の時は強い人が多かったからね。あの時は特別だよ。」

唐巣もまた横島の姿にあのGS試験を思い出していた。

あの素人だった横島が、今ではGS業界において知らぬ者はいないほどの存在となったことに感慨深いものがあるらしい。


「よこしまさーん! わっしは……わっしは……!!」

「お前、またそれかよ。いい加減慣れろって。」

ちなみにタイガーはまた緊張していたらしく、ガチガチになって横島を見つけるなり絡んできていた。


「アシュタロスに比べたら屁みたいなもんだろ。」

「比べる相手が間違っていますわよ。」

横島はアシュタロスと対戦した時を思い出してタイガーに呆れているが、あまりの違いに比較にならなく、またタイガーはアシュタロスの最後を見てはいたが直接対峙してないので比べたくても出来なかったが。


それと六道女学院では在学中の免許取得は三年から認めている。

一定の力量がないと危険ということで三年までは禁止しているといった方が正しい。

かおりは実家のゴタゴタと、本人が特に急がなかったことで今回は見送っており、おキヌも現時点では積極的に受けるメリットがないので受けてないし、真理は実力不足から悩んでいる段階なので出てないが。

横島も見学したクラス対抗戦に出ていたメンバーなんかが今回は何人も参加している。



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