その一

そしてようやく訪れた共同除霊の出発日は金曜であった。

日程としては金曜の夜に深夜バスで東京を出発して土曜の午前中に現地に到着し、帰りは日曜の夜の深夜バスで現地を出発して東京には月曜の朝に到着して学校に行く予定である。

この日程については調査と除霊に使える時間と、移動に掛かる時間や経費を考えた結果の選択だった。

当初は令子が言ったように金曜の夜に新幹線での移動を考えていたが、新幹線を降りた後の現地での乗り継ぎなどを調べると金曜の夜に現地に到着するにはタクシーかレンタカーを使うしかなかったのだ。

最終的には費用や時間を考えると深夜バスが一番安くて効率的だったのである。



「お札は高いのは要らんな。 霊体ボーガンは一応持ってくか」

そんな出発日である金曜の午後、学校が終わった横島はひと足に美神事務所に到着すると除霊に持っていく道具を確認していた。

見鬼君や霊視ゴーグルなどの調査系の道具は当然持っていくし、お札や霊体ボーガンなどの攻撃系の道具も一応持って行くらしい。

攻撃系の道具は横島本人は使うことは滅多にないが、おキヌは稀に使うことがあるのだ。


「えっ!?」

「………」

その後ピートやタイガーにおキヌ達と参加メンバーが集まって来るが、かおりと魔理は事務所に入るなり初めて見る横島のスーツ姿に驚きの表情を見せる。


「横島さんがスーツ着るなんて珍しいですね」

「依頼人と交渉しなきゃならんからな。 流石に交渉はピートに任せられんし……」

横島がスーツを着ることは滅多になくおキヌやピートですらも驚いているが、そもそも横島は依頼人との交渉が無ければスーツなど着ることはない。

日頃から横島が一人で除霊をすることはたまにあるが、交渉などは全て令子が行うので横島は服装など気にしたことはないのだ。

ただ今回は現地で調査をして場合によっては依頼人と交渉し直す必要があった為に、横島も珍しくスーツを着てきている。

ちなみにスーツは以前に令子がオカルトGメンに出向した際に着ていたものだった。

本来は面倒な交渉なんかはおキヌかピートにでも丸投げしたい横島だったが、おキヌやピートでは交渉にならずに依頼人に譲歩し過ぎてしまうのが明らかであり横島が交渉をするしかない。

横島も今回の除霊に成功すれば纏まった収入が入るので、それなりにやる気を出していた。


「弓さん、荷物多いですね」

「着替えの他に制服と霊衣を持参しましたから」

そんな中で個人の荷物が一番多いのはかおりだった。

着替えも当然ながら霊衣に加えて学校の制服まで持参してる。

制服に関しては依頼人との交渉や現場周辺の調査を考えて持って来たようだ。

横島やピートのようにGS免許があればいいが、ない場合は服装次第で印象が変わるだけに用意だけはして来たらしい。

おキヌは予想以上に着替えの多いかおりに驚くが、魔理は必要ないだろうという表情であり彼女自身は荷物が少なく木刀もそのまま隠すことなく持ち歩いている。

横島との話以来、かおりが魔理のやることに口出ししなくなったので好きにしてるらしい。



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