その三

「やはりシャワーがあるといいですわね。」

翌朝に横島とかおりを起こしたのはカーテンの隙間から入る気持ちのいい朝日だった。

新居初日だけにいろいろと燃え上がった一夜だったようで、朝一でシャワーを浴びたかおりはご機嫌な様子で朝食の支度をする。

別に狭い部屋は構わなかったのだがシャワーもお風呂もないのはやはり不満だったのだ。

まあシャワー中に横島が入ってきて朝食の時間が遅くなったが。


「これが横島さんの部屋とは……。」

この日は午前中は仕事もないので朝食を食べてオカルトの勉強を始める横島とかおりだが、10時くらいになるとおキヌと魔理にピートとタイガーが一緒に引っ越し祝いにとやって来たがおキヌを除く全員が部屋に入るなり唖然としていた。

魔理は知らないが前の横島の部屋を知るメンバーてしては当然の反応だろう。


「前の部屋の痕跡が全くありませんね。」

「羨ましいですノー。」

「テレビと冷蔵庫は寝室にあるぞ。洗濯機は買い換えたけどな。」

まあ横島も今年に入ってから正式なGSとして歩合給になり金回りが良くなったのを知っているので、それなりの部屋に住むのだろうと予想したようだが誰もが予想以上の部屋だったらしい。

実際前のアパートから持ってきた安い棚に小さいテレビと冷蔵庫は捨てるよりはと言うことで寝室に置いている。


「このティカップも高いのか?」

「それは百均ですわよ。 食器なら百均で十分ですから。」

一通り部屋を見せてもらいリビングで一息つく一同はあまりに高級感溢れる部屋に借りてきた猫のようになるも、かおりがおキヌ達にと紅茶を入れて出した百均のティカップすら高級感あるように見える部屋だった。


「お掃除大変そうですね。 横島さん大丈夫なんですか?」

「……大変そうだよなぁ。」

一方おキヌは横島の性格をよく知る故にこの部屋を維持できるか少し心配していた。

横島自身もはっきり言えば自信がなく、幼い頃より厳しく躾られてきたかおりとの日常生活での違いが一番浮き彫りになりそうなところでもある。


「ダメなら定期的にハウスクリーニングを頼むという方法もありますわよ。 下手に自分でやるよりは仕事に集中して頼むところは人に頼む方がいいかもしれませんわ。」

肝心のかおりの方は無理に横島に掃除しろと言うよりは素直にハウスクリーニングでも頼む方がいいと考えていた。

横島がある程度でも自分で出来るならばかおりが細かいところをやってもいいが、正直使う時間を考えると業者に頼むのも選択肢の一つだと思うらしい。

かおりの価値観では本来霊能者は自分の身の回りの整理整頓など出来て当たり前だと思うものの、横島にそれをやらせるよりはオカルトの勉強でもしてくれた方が合理的かと最近は考え始めている。

それに一人の女性としてはあまり細かい男は父親を思い出すので今一つ好きじゃないとの本音もあった。

かおりの父は弟子の指導に寺の本堂の掃除などをさせて細かく注意するので、あまり神経質にあれこれやられるよりは素直に出来ないからと言ってくれた方が女としては好きだった。




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