その二

横島の部屋に静けさが戻ったのはすでに外が明るみ始めていた頃だった。

過ぎ去りし時間と横島が念のためと用意した十個入りの避妊具が残り僅かとなったことが二人の初体験の想い出となるが、実はかおりが用意した避妊具のサイズが合わなくて横島には使えなかったことも誰にも話せぬが想い出となるだろう。

流石のかおりも避妊具にサイズがあることは知らなかったらしい。


「……話に聞いたのと違いましたわ。」

「あー、すいません。 俺のとこは家系的にみんなこんな感じみたいで。」

回数もサイズも時間も明らかにかおりが聞いた話と違ったが家系的に横島家はそんな男子が多いようだ。

現状ですらどちらかと言えばギブアップしたのはかおりの方で横島は落ち着いたがまだ余裕があったりする。


「やはりお風呂がある部屋に越して頂きたいですわ。」

「そうっすね。 そのつもりですよ。」

横島としてはなるべく優しくはしたが幾分暴走もしていて二人は朝の日差しをカーテンの隙間かは見ながら就寝することになる。

ちなみにかおりはこのタイミングでお風呂に入れぬことに不満を感じていて、横島と話し合い今日の午後に不動産屋巡りをすることにした。

横島としては一眠りしたらまた続きを期待していたようで少し残念そうだが、正直かおりは身体が持たないので無理であった。


「貧ちゃん。 やっと静かになったね。」

「あのアホ。 壁が薄いの忘れんなや。」

それと横島は忘れていてかおりは知らないが横島のアパートは部屋の壁が薄いので、いくら横島とかおりが気遣っても漏れ聞こえる音に隣人の小鳩は眠れね夜を過ごすハメになっていたりする。

横島のことは好意と憧れの入り雑じった気持ちを持っていて少し複雑な心境だが、人一倍不幸に苦しんだ小鳩は横島の幸せを喜んでやれる強い心があった。

しかしまあうら若き乙女が一晩中眠れね夜を過ごせば流石に何とも言えぬモノがあるらしく、福の神の貧と共に朝方になりようやく眠ることが出来ることになる。


「問題なのはどのくらいの部屋にするかだよなぁ。 GSって安定しないしオレの場合は怪我とかしたら収入なくなるし。」

そして午後になると部屋で軽く朝食件昼食を食べて不動産屋わや見て歩くが部屋選びは本当に大変であった。

場所や築年数によりピンからキリまで違うし横島の場合は現在歩合に移行したので収入は桁違いに上がったが、一歩間違えれば無収入に転落する危険性もある。

無論労災もGS用のものに入ったし保険もかおりの勧めで入ったのでいきなり全くの無収入にはならないが。

「霊障物件とか探せば安く借りれる可能性がありますが普通に少し古い物件かワンルームでいいのでは?」

「弓さんの要望はお風呂だけっすか?」

「ええ、まあ。 通勤時間を考えるとあまり郊外に行くのも大変ですし、GSの場合は時間が不規則なのでその辺りで苦情が来ない物件を探した方がいいと思いますわ。」

現状ではあまりお金には困ってないもののやはりGSとしては自信がないのでかおりの意見を聞きつつ安くてそこそこの物件を探していくことになる。

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