その二

その後横島達はカラオケを楽しみ夕食にと魔鈴のレストランで少し奮発した食事をして解散することになった。


「弓さん。 送りますよ。」

「今日は……その、泊まったらダメですか?」

すでに日が暮れていてタイガーは魔理を送るからと一緒に帰り、ピートは気を利かせてか近くの美神事務所までおキヌを送ると別れたので横島とかおりは駅に向かい歩き出す。

明日は土曜なので少し遅くまで遊んだが流石に夜は危ないからと横島はかおりを送って行こうとするも、少し何か言いにくそうにかおりは泊まりたいと言い出して驚かされる。


「大丈夫なんっすか?」

「ええ。 今日は友人の家に泊まるからと。」

「ならいいっすけど。」

横島がかおりと付き合い出して丸二ヶ月が過ぎたが、流石にかおりが泊まるなんてことは初めてで夜遅い除霊になってもタクシーで必ず送っていたのだ。

珍しいなと思う横島であるが親が大丈夫ならいいと軽く返事をしてしまう。


「その、今日はお祝いですから。」

何か意を決した様子のかおりは少し恥ずかしげに泊まる理由を語るが、鈍感な時はとことん鈍感な横島はその意味を全く理解してなかった。

その後横島とかおりはアパートに戻ると銭湯が閉まらぬうちにと銭湯に行き部屋に戻ると、持参したパジャマ姿のかおりに流石に少し横島も意識し始める。


「えーと、勉強でもしましょうか。」

湯上がりの少し濡れた髪に石鹸の匂いがしてきて横島は思わず息を飲むと、珍しくオカルトの勉強でもしようかと言い出すがこの日は何故かかおりが止めていた。

いつもなら普通にかおりに迫りキスをしたり服の上から身体を触ったりは相変わらずマメにしている横島も、湯上がりのパジャマ姿でそれをやれば止まらなくなる気がして自重している。


「本当に察しが悪い人ですわね。」

「えーと。」

「私、覚悟決めましたわ。 それと今日は一応大丈夫な日ですから。」

横島も心の何処かで期待しつつ複雑な過去とかおりの為にと考えないようにしているが、それなりにスケベなことはするも最後までしないで自重している横島にかおりはとうとう最後の一線を越える覚悟を決めたようであった。


「かか……覚悟? だだ……大丈夫な日?」

「ええ。 私の為にGSへの道に進んでくれたのでしょう? 今度は私が横島さんに答える番ですわ。」

付き合う前からそれに近い状態だった二人がここまでに至るまでにはすでに半年余りになる。

一応避妊はするが、もし万が一子供が出来たら少し早いが産んでもいいとかおりはそこまで覚悟を決めていた。

とりあえず見習い卒業までとの約束だが横島があまり乗り気ではなかったオカルト業界に残ったのは紛れもなくかおりの為であり、横島が卒業するこのタイミングでかおりは自身も最後の覚悟を決めてこの日を迎えている。


「えーと。 ちょっと心の準備が……。」

「私に恥をかかせたいのですか?」

「いや、その。」

ただここまで来ると逆にヘタれるのが横島という男だった。

無論嫌な訳ではないし散々期待して待っていたが、いざとなればどうしていいか分からない男なのだ。


「当たり前ですが初めてですから優しくして下さい。」

「……はい。」

完全にヘタれた横島に対してかおりは部屋の明かりを消して横島に身を委ねると、横島も嫌なはずもなく二人はこの日最後の絆を結ぶことになる。



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