その二

「しかし、本当にいいのかい?」

同じ日令子はオカルトGメンの仕事を手伝った後に西条に誘われて都内のレストランで食事をしていた。

二人の関係は相変わらずのままで特に変化はないが、西条は横島の変化とそれを見ているだけの令子を少し案じている。


「みんな誤解してるわ。 私と横島クンは雇用主と従業員以上の関係は元々なかったのよ。 そりゃあ仕事以外にも多少は親しくしたけど。」

ただ横島が変わったように令子もまた変化していて周りが心配するほど落ち込んでる訳でも横島に固執してる訳でもない。

喪失感がないとは言わないが同時にホッとしてる部分もありショックを受けてるだけとも言えない状況なのだ。


「それにこの前ね、六道女学院の実習の監督に行って分かったの。 あの子なら横島クンと上手くやれるわ。」

令子に気持ちの整理をさせる最後の一押しをしたのはやはりかおりであり、先日の除霊実習の時のかおりの一言であった。

横島と真正面から向き合い信じてと言い切ったかおりに、令子は自分やおキヌが踏み込めなかった一線を越えたのだと理解したようである。


「そうか。」

「正直ホッとしてる部分も大きいわ。 これで私はやっと前世の因縁からも解放されるし、来世の心配して私のエゴを押し付けることもなくなる。 横島クンがどうとかじゃなくて前世とか来世に巻きまれたり巻き込むのもうたくさんなの。」

失った喪失感まで否定はしないがそれと向き合いながらも前世から続く因縁と、ルシオラを含めた来世への想いから令子は一足先に抜け出せたことにホッとして安堵してる部分もあった。

かおりは産まれてくる子供の前世を選ぶなど人間がしていいことではないと考えたことも令子に横島とかおりの関係を認めさせた一因ではあるが。

ただ令子自身は元々精神的に必ずしも強いとは言い切れなくルシオラの件も負担だったのは間違いない。


「なら僕にも可能性はまだあると考えていいのかな?」

「さあ? 分からないわ。 しばらくは一人で楽にしてたい気はするけど。」

そして令子の本音を聞いた西条は半ば諦めていた令子への想いを口にして自分をアピールするも、令子は当分は色恋沙汰はしたくないと少し苦笑いを浮かべつつも否定はしなかった。

令子にとって西条はまだ兄のような存在であるし、西条もまた前世の西郷を思い起こしてしまう。

誰かいい人が居ればとは思うも今すぐならば西条とと考えるとやはり前世がちらつくのだ。

ただ西条はそんな令子に可能性がない訳ではないのだと理解するも、焦りは禁物だなと感じ当面は現状維持に勤めることにする。




85/100ページ
スキ