その二

除霊実習が終わると横島は自主的にオカルトの勉強をするようになっていた。

六道女学院の霊能科の教科書や美神事務所にある初心者向けの本を読み始めた程度だが、かおりに半ばやらされていた勉強を自主的にやり始めたのは横島なりに除霊実習で思うところがあったからだろう。

かおりは学校においてすっかり横島のことを知られてしまったが、横島が懸念するような問題は起きてなく多少からかわれる程度である。

そして除霊実習で一番変化したのはおキヌと魔理だった。

おキヌは横島とかおりの関係を祝福して友人として喜ばなければと思っていた反面では割り切れない気持ちが残っていたが、横島が過剰な手出しを止めるように言われて迷い戸惑ったのを救ったかおりの姿を見て心から納得出来てしまったのだ。

そして自分の初恋は終わったのだと理解した。


「レベルが違うよな。」

「美神さんと横島さんはプロの中でも別格ですよ。」

一方の魔理はかつては見下し眼中にすらなかった横島の力と学校での評価に最早争う気力さえ失うほど実力が違うと感じ始めていた。

この日はおキヌと二人で放課後の学校で基礎的な修行を教わっている魔理だが、実力が違うことにプロとアマチュアの違いをようやく理解したようである。


「それに横島さんは自分の為に力を発揮出来ない人なんです。 不器用だから。 この前なんかは弓さんが横島さんを信じてあげたから。」

もう横島をライバルのように見れなくなった魔理だが、おキヌはそんな魔理の珍しく素直な様子に少し可笑しくなったのか笑っていたが横島にも弱点は多いと教えていく。

一番の弱点はやはり安定感の無さであり本気になれば令子も超えられる力があるが、普通に戦えば恐らく十回中十回負けてしまう精神面もある。


「ふーん。 しかしあの弓があんなこと言うなんてな。」

「言葉に出さないと伝わらないんですよ。 現に私は言葉に出して伝えられませんでした。」

まあ魔理からすると横島とかおりのあの瞬間の会話もまた驚きだったようで、プライドの塊のような人だったかおりが人前であれほど本音を見せたことにも驚いていた。

昔のかおりではないと理解はしていたが、何よりも横島を案じて駆け寄った姿はやはり衝撃だったのだ。


「……おキヌちゃん。」

「弓さん私にも何度か言ってくれてましたから。 本当にいいのかって。 でも私は何も出来なかった。 上手くいかないものですね。」

おキヌは思い出すとまだ心が微かに揺れていたが、以前と違い今度こそ本当に前を向いて歩ける気がした。

自分もいつかかおりやルシオラのように愛し愛される恋がしたいとおキヌは笑顔で語れるようになっていた。


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