その二

「夜が明けて来たわね。」

「長かった!」

「やっと落ち着けるよ。」

決して強力な悪霊や妖魔が出た訳ではないし一体一体の悪霊は生徒達でも十分倒せる相手だが、長時間緊張を強いられた生徒達は東の空が明るくなり始めると歓喜の表情を見せた。

強い悪霊ばかりが厄介なのではない。

そんな当たり前の事実を再確認した生徒達も多かった。


「これで終わりっすか?」

「そうね。 後は神社を浄めれば霊的な拠点として一年は持つのよ。 少なくとも三つある神社を越えて人里には降りてこないわ。」

そして夜明けと共に悪霊達は山から降りて来なくなり、最後の仕上げに山と人里の間にある神社を浄めて霊的な力を回復させれば一年は大丈夫なようである。

神社の本殿や敷地に鬼門となる場所に建てられた鳥居に鬼門に当たる方角に置かれた浄めの岩に浄めのお札などを、生徒達で浄めてお札などは新しいものと交換すると終わりとなるらしい。

令子と横島などのGS組は除霊自体が終わると事実上仕事は修了であり、横島と令子は生徒達の作業を見ながら地元の人が用意してくれた温かい物とおにぎりなどで空腹を満たしていた。


「アンタも見ときなさい。 地方だと神社や寺とか地蔵に石碑の保守点検なんて仕事もあるのよ。 安くて面倒だから私はやったことないけど。 定期収入になるからそれなりにやってる人も居るわ。」

「保守点検っすか?」

「今は無人の神社や寺なんかが多いのよ。 寺社は昔は氷室神社みたいに本来は地域の霊的な要だったのよ。 なにも考えずに放置すると地域に影響が出る場合があんのよ。 土地神なんかが力を持っててちゃんと管理してると大丈夫なんだけど最近は土地神ですら粗末にして土地神が居なくなる土地もあるから。」

あと少しで終わりだと神社の浄めと掃除をしていく生徒達を眺めながら令子は地方のGSによくある寺社の管理の仕事について教えていく。

東京だと無人の寺社は都市部にはあまりなくあっても管理者が居たりするが、地方だと無人で地元の人が清掃する程度の管理しかされてない寺社も多いのだ。

宗教系のGSは昔に比べるとやはり減少してるし非霊能者の宗教家もそれほど多くないし地域のコミュニティの変化などで霊的な管理が疎かになっていて、それの穴を最低限だけ埋めるのが寺社の維持管理の仕事らしい。

あまり危険もなく安いが定期収入になることから大きな依頼が少なく兼業GSなんかが多い地方では人気の依頼でもある。


「本当は神社関係なら神道とか寺なら宗派によって管理や浄化の仕方も違うんだけどね。 だいたいは邪気や陰気を霊力で祓って浄化のお札貼っとけばなんとかなるわ。」

まあ令子自身は安いし浄化自体が面倒なのでほとんどそんな仕事受けないらしいが、霊力が高く文珠により強力な浄化が出来る横島なんかだと性格的にも合うのかもしれないとは思うらしい。

そして最後は教師陣が最終確認をしてこの日の除霊実習は終了となり、宿となる温泉旅館に戻ることになる。


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