その二

冬の深夜の除霊の敵は何も悪霊ばかりではない。

人が集中力を持続出来る時間など限られているし何より日頃寝てる時間なだけに睡魔も敵だと言えるし、冬の凍りつくような寒さもまた手がかじかんだりして霊力の集中が出来なかったりする生徒が出てくる。

悪霊は決して多くはなく強くもない故に油断や気の緩みも出てきてしまい、思わぬ苦戦を強いられことになる。


「横島クン、あんまり前に出ないで!」

「でも出ないと間に合いませんよ!?」

「たいしたダメージにならないわよ。 言い方は良くないけど実戦の痛みを知るのも彼女達に必要なのよ。」

本来の力を発揮出来なくなってくると横島が生徒達に混じり手助けしてしまうが、それもすぐに令子から止められてしまう。


「そんなこと言われても……。」

「アンタが考えてるより実戦経験ない子達なのよ。 見習い同士の訓練じゃない生の悪霊の力を身を持って感じなくてどうするの!」

ただ横島は危なそうな強くて悪霊のみを手助けして後は手を出すなと言われると戸惑ってしまった。

基本的に見守るなんて経験が横島にはないし感性で生きてる男なので考えるより先に動いてしまうのだ。


「横島さん。 貴方は優しすぎますわ。 でもみなさん覚悟を持ってこの場に居るんです。 私を信じてくれたように、みなさんのその覚悟も信じて下さい。」

令子の指示は横島を戸惑わせてしまい横島にまで迷いが出始めると見てられなくなったのか、こちらに来てから横島との接触を避けていたかおりが近寄りアドバイスというか横島の迷いを振り払うべく一言をつげる。

彼女は彼女なりにこの数ヵ月横島を見て来たし共に歩むべく歩み寄っても来た。

その上で感じたことは横島は優しすぎるということであり、その優しさは必ずしも相手の為にならないことだろう。

自分を信じられず大切な人を失った横島は無意識に守ろうとしてしまう。

その手の届きそうなモノならば全て。

そしてかおりはそんな横島を止めて心から納得させる術を理解していた。


「弓さん……。」

信じるという一言は簡単だが非常に重要で難しいな一言である。

他の誰でもない彼女の言葉ならば横島の心に届くことが出来るのだ。

それにかおりが使った優しすぎると言う言葉は横島が過去に一度だけルシオラに言われた言葉でもある。

横島は決してかおりとルシオラを重ねて見てる訳ではないがその言葉を語るかおりの表情がルシオラとダブって見えてしまい、横島を冷静にさせ過去の繰り返しだけはすまいと決意もさせていた。


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