その二

結局吹雪は日暮れと共に止んだが氷点下の凍てつく空気と雪がチラチラと降り続く中での除霊となった。

現場は山から麓の人里を守るかのように三ヶ所に築かれた神社になり、三年から順に悪霊が集まりやすい場所に分かれて除霊を開始することになる。

神社とその周囲は除霊がしやすいようにと地域の有志が吹雪の中も除雪をしてくれていて、吹雪が止んだことを誰よりも喜んでいた。

周囲は神社のすぐ裏が山となり他は田畑があるのだが、冬場は山以外は一面の銀世界であり夜などは神社の入り口の付近にポツンと街灯がひとつある以外は明かりもない。

この地域は高齢化が進み六道女学院の生徒など孫か孫より若いようなお年寄りが多く、そのため年端もいかぬ少女達がわざわざ東京から除霊に来てくれるとなると集落を上げて準備が行われている。

神社の境内では屋外には焚き火で神社の内部は各家庭から持ち寄られた石油ストーブなどで暖を取れるようにと準備をしているし、屋外ではお年寄り達が夜食の準備にと寒いなかで温かいものを作ってくれていた。


「なんつうか、凄いっすね。」

「ここは限界集落一歩手前なのよ~。 冬の吹雪の中で悪霊に怯える日々を送って来た人達ですもの~。 最初の頃は拝まれて困ったわ~。」

横島と令子はちょうどかおりやおキヌ達の居る二年の担当となり一緒責任者として同行していた六道冥菜理事長と共に現場に入るが、来てくれてありがとうと除霊を始める前から感謝され泣きそうなほど喜ばれることに横島は戸惑ってしまう。

冥菜いわく地域は限界集落の一歩手前で自治体も予算の関係からほとんど出来ることはなく、そこに晩冬から春にかけて悪霊が人里に降りてくるものだから集団転移が検討されていたほどだ。

それでも近隣には町の第三セクターが運営するスキー場と温泉があることから、町でも方々を走り回り除霊をしてくれるGSを探してようやく見つかったのが六道女学院だった。

町で出せる費用と除霊内容が合わずに何処も取り合わなかったのだが、悪霊の強さがそれほどでもない割に除霊難易度が高く一般のGSでは決して受けることが出来ぬ除霊は、生徒達に学ぶべきことが多いからとボランティアにより引き受けて以降悪霊の活動により除霊が必要無かった年を除き毎年除霊を続けている。

地域のお年寄りからすると本当に救いの神だ仏だと最初の頃は拝まれたらしく、六道女学院の側が本気で困ったとの逸話は六道女学院では有名で今でも教材として教えてるほどらしい。


「それで俺達は火に当たってていいんっすか?」

「除霊の準備は結界の構築から長期戦に備えたローテーションまで授業としてやってんのよ。 あとあんた文珠禁止ね。 使うほどの相手来ないし。」

そのまま到着早々に地域のお年寄り達に挨拶をしてさっそく除霊の準備を始める生徒達を、横島や令子は焚き火に当たりながら見てるだけで特にやることはない。

丁稚根性の染み付いた横島は自分も手伝うべきか迷い令子に声をかけるが、余所者の横島に手伝えることなどないし準備からして実習の一貫なのだ。

時おり見えるかおりの姿に横島は少しホッとしつつ除霊が始まるのを待つことになる。


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