その二

「こんなに雪降っても除霊するんっすか?」

「もう少し風が収まったらやるわよ。 こんなとこまで来て出来ませんって訳にいかないでしょ。」

一方横島は令子や唐巣にピートと共に現場の下見に来ていた。

相変わらず吹雪であり雪国育ちの唐巣はともかく横島とピートは本当に除霊するのかと半信半疑な様子であったが、多少の雪ならば除霊を決行すると聞き不安そうにする。


「実際に雪山に入るわけではないからね。 麓に幾つかある神社を中心に悪霊が集まってくるのを除霊するんだよ。 この除霊は多少の悪霊を残すくらいならば問題ないんだ。 要は山から降りてくる悪霊を無くせばいいだけだからね。」

横島とすればまさか雪山に行かされるのではと恐れているが、そもそも今回の除霊は生徒が主体でやるので横島も生徒のフォローをしなくてはならない。

今回参加のGSで初参加は横島とピートだけであり下見に来たのも事前に横島とピートに現場を見せて除霊を理解させる意味合いもあった。

除霊自体は山の悪霊を完全に除霊するのではなく間引きのように山から降りてくる悪霊を除霊するようであり、今までの横島の経験した除霊とは少し感じが違う。

悪霊が集まりやすい場所には神社を建てて清めてはいるので数さえ減らせば神社の浄化能力で被害が出ない程度には抑えられるらしい。


「この依頼おキヌちゃんに頼めば楽なんじゃあ?」

「それじゃ学生の修行になんないでしょうが。 雪国とか雪山での除霊を経験させるためにここまで来たのに。」

六道女学院の霊能科は全国から生徒が集まるため雪に慣れてる生徒も居るが、中には雪に全く触ったこともない生徒も少なくない。

冬の雪山での除霊自体は正直珍しい部類でよほどのことが無ければ春まで待つのがセオリーとなる。

しかし雪国での除霊は決してない訳ではないので雪のある場所での除霊経験はさせる必要があった。

慣れないと雪に足を取られたり滑ったりするという雪国の常識も知らぬままでは除霊以前の問題なのだ。


「ここは周辺の山々の地形と地脈の流れでどうしても悪霊が集まりやすいのだよ。 まさか山のかたちや地脈の流れを変えるわけにはいかないからね。 昔は神社に霊能者の神主が居て除霊していたらしいが現代だと生活出来ないからね。 地元も山の除霊に出せるお金は限られているんだ。」

説明は主に唐巣がするが基本的に寒いのが嫌いな令子はあまり機嫌がよろしくない。

本来ならば断りたかった依頼なんだろうがおキヌも行くことや横島にも一度くらいは経験させねばと思い来たのだから当然かもしれないが。


「僕達は学生の監督を?」

「そうだね。 手本を見せることと監督をすることが仕事だ。 あまりやり過ぎない程度に除霊する姿を見せながら気を配って欲しい。」

「俺に向かなくないっすか?」

「だから連れてきたんでしょうが! 勉強しなさい。」

GS達の役割は学生の監督と除霊の手本となることらしくピートはまだしも横島は完全に自分には向かない仕事だと自覚するものの、令子に向かなくないからこそ勉強しろと突っ込まれる。

横島は現状でかおりに合わせることくらいは出来ているが共に実力が高いのである意味当たり前のことであり、一般的な霊能者を知りそれに合わせることもそろそろ知らねばならない時期ではあった。

プロになるとあまり知らないGSや力量に差があるGSと仕事をする機会はないが、だからこそ今回のような機会は貴重だと言えるのだ。


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