その二

そして暦は二月に入っていたが六道女学院霊能科では冬の除霊実習が行われることになる。

六道女学院霊能科では春夏秋冬年に四回の霊能科を上げての除霊実習があり、冬は北日本の日本海側にある豪雪地帯での実習であった。

除霊現場は山でありその山自体が周囲から悪霊を集めやすい地形になっていて、一応神社など建てて清めてはいるが冬になると何故か悪霊が集まってしまう地元では呪われた山と言われてる場所である。

近隣には町の第三セクターが運営するスキー場と温泉旅館があるのでそこまで山奥でないことが放置出来ない理由となっていた。


「スキー楽しみね。」

「私は温泉かな。」

ちなみに霊能科一行はバスにて現地に向かっているが、バスの中はスキーやら温泉を楽しみにする少女達で賑やかでありとても除霊にいく雰囲気ではない。

日程は二泊三日だが除霊は実質一日だけなのでスキーも出来るし泊まるのは近隣にある温泉旅館なので、スキー合宿の気分の生徒が多いのだ。

一応極地での除霊経験を積むという目的があるのだが、かおり達は二年なので昨年も同じ除霊をしていて特に問題はなかったので全体として危機感は薄い。


「令子ちゃん~、みかん食べる~?」

「分かったから式神は出さないで!」

そして生徒達のバスとは別のちょっと豪華なバスには、今回の除霊の指導件助っ人として呼ばれたGS達が乗っていた。

メンバーは冥子・エミ・唐巣他十数名ほどのGSに何故か横島とピートが居る。

令子は例によって冥子に絡まれていてピートはエミに絡まれているので横島は、特に何もなく暇そうな唐巣の隣に避難していた。


「元気がないね。 今回の依頼気乗りしないのかい?」

「いや、依頼ってより俺が行くと弓さんが恥をかかなきゃいいかなって。 前にちょっとやらかしたんで。」

他のメンバーの様子はいつもと変わらなく唐巣も少し苦笑いを浮かべる程度だが、珍しく横島に元気がないことを気にして声をかける。

横島に関しては実は今回の依頼はかおりが恥をかくかと思い着いて来るつもりがない依頼だったのだ。

クラス対抗戦の時に少しやらかしたことが頭にあり、自分のせいでかおりが恥をかけばと思えばこそ令子がこの依頼を受けたと聞いても横島は行く気なんて全くなくさほど興味を示さなかった。

ただそこで令子が師匠としてこの依頼には参加しろと強権を発動して来ている。

実は令子は事前にかおりとおキヌとも相談して横島を六道女学院の依頼に参加させようと決めていたのだ。

横島に一般的な霊能者を見せて一般的な力量や集団での除霊方法を学ばせるにはまたとない機会だった。

令子としてはかおりとおキヌに横島を参加させることに対する意見を聞いたが、かおりもおキヌも反対せずむしろ賛成したことで横島の意思とはあまり関係ないところで参加が決まっている。


「まあ、若いとね。 ただその気持ちがあれば大丈夫だろう。 君は同年代の霊能者と比べても決して劣ってなどいない。 自信を持ちたまえ。」

唐巣は横島の懸念に少し困ったような表情を見せるが、かつてならばともかく今の横島ならばそれほど酷いことにならないだろうと告げると自信を持つようにとアドバイスする。

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