その二

そして次の日曜には横島とかおりにおキヌとタイガーと魔理による除霊をすることになっていた。

見習い達による共同除霊はかおりの美神事務所移籍により令子の本来の目的としては終わったが、おキヌが魔理の為に続けたいと言ったこととおキヌと横島とかおりに関しても格下の霊能者と除霊をする経験を積んだ方がいいとの令子の判断から続けている。

特に横島とおキヌは今まで一流の霊能者としか仕事をしたことがなく、言い方は悪いが足手まといになり兼ねない魔理やタイガーとの除霊は得るものがあるだろうという令子なりの親心からでもあった。


「なんつうか、自信無くすな。」

「連携が凄いですノー。」

そんな見習い達による共同除霊だが除霊旅行から数ヵ月で明確に変化したのは横島とかおりの連携だった。

それほど難しいことはしてないしする必要もないレベルの除霊だが、互いに上手く連携しながら楽々と除霊する姿は魔理やタイガーから見れば惚れ惚れするとも自信を無くすとも言えるほどだ。

まだ一緒に修行するようになり一月ほどでしかない二人だが現段階でも互いの実力や動きに考え方なんかも理解し始めたことで連携力はかなり進歩している。


「結局才能が全てなのか?」

「違いますよ。 横島さんに才能があったのは事実ですけどそれを伸ばしたのは横島さん自身です。 何度も命を危険に晒して実戦の中で成長させたんです。」

魔理に至ってはかつて見下していた横島の実力に複雑な心境もない訳ではなかったが、正直才能という物が違うんだと強く感じさせられて以来横島に対する反発や軽蔑はかなり無くなっていた。

オカルト業界は結局才能が物を言うと噂されるのは六道女学院でも言われることだが、話を聞けば横島は高校二年の春までは霊能者ですら無かったと聞いて以降才能というものを嫌というほど見せつけられている。

しかしおキヌはあっさりと才能と口にした魔理に少し強い口調でそれを否定した。

才能というものまでは否定しないが横島が現状の実力を得たのはそれが必要なほど厳しい実戦を経験したからに他ならない。


「……実戦か。」

「でも同じことは魔理さんには出来ませんよ。 美神さんのようにギリギリの戦いで横島さんや私を守りながら成長させるなんて普通は出来ませんから。」

ある意味霊能者として遅咲きなのは自分と似てるだけに魔理は横島の強さと経験を意識してしまうが、おキヌは同じく実戦で力を付けたいと考える魔理にそれは出来ないと厳しい口調で言い切る。

横島が天才ならば令子も天才だろう。

運命に導かれるように出会った二人だからこそ成し遂げた成果であり、普通の霊能者には無理なのは他ならぬ二人を一番近くで見てきたおキヌが一番理解していた。


「魔理さんは魔理さんのペースで頑張りましょう。 私もお手伝いしますから。」

もう令子と横島のかつてのようなギリギリの戦いを見られないことがおキヌは少し残念だったが、過去を懐かしむだけでは何も変わらないと魔理と共に自身も成長せねばと決心して除霊をしていく。

少しずつではあったがおキヌもまた前に進み始めていた。



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