その二

「月収二百万かぁ。」

かおりが美神事務所で働くことになり最初の月である一月も終わりに差し掛かろうとしていた。

横島とかおりは放課後と土日のみ除霊をする形となっていたがそれでも月収二百万ほどになっている。

実質的には週の三日ほどで一日二~三時間の働きで得られた報酬としては破格であるが、オカルト業界においては桁外れというほどではない。

ただ横島としては自分の労働の対価としてこれほど貰えるとは少し前には思えなかったらしく感慨深げであったが。


「出来ましたわよ。」

そんなこの日は土曜ということで朝から横島の部屋でオカルトの勉強をしていた横島とかおりであるが、お昼時になるとかおりは手早く昼食を作っていた。

メニューはレトルトのパスタソースを使ったパスタとサラダにスープというお手軽メニューだが、短時間でさっさと作った割に本格的である。


「いただきます!」

共に歩合給ながら金に困ることはなくなった横島とかおりであるが生活自体はあまり変化はなかった。

土日は修行に勉強に仕事にとほとんど朝から晩まで一緒に居るが外食するのはせいぜい週に一度ほどだし、あとはかおりが横島の部屋で作っている。

おかげで台所には調理器具や調味料なんかが増えているし、部屋には今までなかった鏡とかトイレには汚物入れが置かれるようになった。

流石にトイレの汚物入れの中身は横島に触らせたくないらしくゴミの日の前日にかおりが横島宅のゴミと一緒に纏めたりしていたが、住んでる訳ではないが週の半分以上は部屋に女性が来ると女性が必要な物が部屋には増えている。

横島としては収入が安定しかつ高収入になるならいろいろ使いたくなり始めていたりするものの、アダルトビデオで失敗しているのでそっち方面には使えぬ以上キャバクラや風俗なんて論外だった。

あとは今まであまりお金をかけられなかった服やら食事にお金をかけるしか使い道がないが、服に関しては元々あまり興味があった訳ではないので高い服を買うことはないし食事もコンビニや弁当屋の弁当でせいぜい使っても一食千円は越えない。

使いたい欲求はあるもののいざ何に使うかと言われると今一つこれといった使い道が思い浮かばない、ある意味ヘタレとも寂しいとも言える現状になる。


「車は買うんですの?」

「うーん、どうしよっか。 除霊をするのにあれば便利なんだよな。」

「引っ越しするならそちらにお金もかかりますわね。 あと税金分は残しておいた方がいいですわよ。 GSは個人事業ですから申告しなくてはなりませんし。」

ただ今のところ大きなお金の使い道として引っ越しと車の教習所の費用があるので、一月分の給料はなんだかんだと使い道が決まっていた。

引っ越しに関しては雑誌などを買って見ていてかおりにも意見を聞いているが、美神事務所が都心にあるため都内に借りるとなると家賃が高く場所や築年数に車を買うなら駐車場がある物件など考えれば考えるほど大変である。

かおりとすれば無駄遣いしないで欲しいとは言うが夫婦でもなく横島の給料なので細かいことまで口出しをしないようにと気を付けているが、横島という男は計画性があまりないので最低限必要なお金を残しておくようにとはアドバイスしていた。

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