その二

「結局弓さんが出ないとダメなんじゃん。」

それからしばらくすると六道女学院ではクラス対抗戦が行われたが、かおり達のクラスは二回戦敗けと惨敗だった。

出場したのはおキヌと魔理ともう一人のクラスメートであったが出場するような生徒は何処のクラスでも研究されているので、かおりが出場しない分の戦力ダウンが結局敗因だとクラスでは見られる。

おキヌも魔理も型にハマると強いが相手が型にはめないように戦っていて、なまじ特化した分だけ研究されると弱いのだと露呈した形になっていた。


「必要なのはそれぞれに敗因を分析し次に備えることですわ。 ただ氷室さんなどは対人戦に力を入れるのは必ずしも必要なのか疑問ですが。」

「ネクロマンサーだしね。 中途半端に対人戦に備えるよりそっちの修行が先よね。」

おキヌ達も頑張ったが結果は巡り合わせもあまりよくなく二回戦敗退したものの、弱点を補い修行するか長所を伸ばすかは実際難しい判断になる。

クラス対抗戦を意識するならばおキヌももう少し対人戦の修行が必要であるが、ネクロマンサーのおキヌが中途半端に対人戦を修行しても学校を出たあとの実戦で使い道があるかと言われると今一つ怪しい。

無論弱点を補いネクロマンサーの効かぬ妖魔を想定するならばネクロマンサー以外の修行も必要だろうが、仮にGSになった時におキヌがそこまで対人戦でネクロマンサー以外の除霊をするかと言われると微妙だった。

一般的なGSは得意な分野で仕事をするのが一般的で令子のようにオールマイティで料金次第で何でもするGSは以外に少ない。

早い話がネクロマンサーの能力だけで十分一流として活躍出来るのだ。

従ってあまりクラス対抗戦ばかりを意識していいのかは疑問があり後は本人次第となる。


「弓さんのカレシ免許持ちでしょ? ラッキーじゃん。」

「そうよね。 免許取らなくてもカレシが独立したらやってけるじゃん。 私も雇って欲しいわ。」

クラス対抗戦の敗北に少し重い空気になるクラスだったが、クラスメートの一人がかおりの恋人の話をすると空気が明るくなる。

かおりのクラスではすでに恋人が美神事務所の見習いだとバレていて一年の時の対抗戦に来て騒いだ男だとも知られていたのだが、幸か不幸かそんな人も居たなという程度でほとんどのクラスメートは印象に残ってなかった。

顔が見たいと騒ぎ以前撮影したプリクラを見せるハメになったが見た目は本人が気にするほど悪くないので、意外に普通の相手だと驚かれた程度だ。

ただここでも結局横島を評価するのに手っ取り早いのはGS免許であり、免許さえあれば一流にはなれなくてもそれなりでいいならやっていけるのがこの業界だった。

一般的に六道女学院でさえ高校卒業から数年かけて試験に挑み二十代前半で免許が取れれば御の字だというのが実情なので、将来が約束されてるようなGS免許持ちは評価が高い。

まあピートのことを知れば当然横島より評価されるのだろうが。


「それほど単純に上手くいくかはわかりませんわよ。」

他人事なため楽観的に羨むクラスメートにかおりは苦笑いを浮かべそれを否定した。

才能もあるし免許もあるので横島はGSになれるだろうが横島の性格では何年かお金を貯めたら辞めそうだとかおりは本気で思っていた。

かおり自身も横島が本当に辞めたいなら別の人生も悪くないかもと少し考え始めているが。

現時点で先のことは分からないものの、横島は下手すると文珠を令子辺りに売るだけで生きていけるのでかおりとしても無理強いする気はない。

さすがに見習いは卒業して欲しいが。



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