その二
「仕方のない人ね。」
一方一月も中旬に差し掛かろうとする頃になってもかおりの母と闘竜寺の関係は切れてなかった。
未だに弟子が困って連絡をよこしてはアドバイスすることが続いていて、最近は母が闘竜寺を離れた影響で檀家との関係が上手くいかなくなり始めてることだ。
寺にとって檀家とは寺を支えてくれる存在であり何より心を砕いて接する必要がある。
葬式仏教と言われる現代において常日頃から寺と共に生きてくれる檀家の大切さは闘竜寺とて変わらない。
寺に関係ない相談事やら愚痴などまでこぼすようなお年寄りも多いが、年配者ほど冠婚葬祭を大切にするので大切に扱わねばならない。
しかしかおりの父は檀家のお年寄りなどが闘竜寺のこれからを心配して母と娘とよく話し合うようにと勧めたり頭を下げてでも戻って来てもらったらどうだと言われたりすると、何も答えずに無表情で話を終わらせるので檀家の人達も父の人柄に疑念を抱き始めたらしい。
元々無口な人だった父は檀家とのコミュニケーションを取ったことがほとんどなく檀家の人達も以前は男は無口なくらいがいいと評価していたほどだが、母が居なくなりいざ父が自分で檀家とのコミュニケーションをとらねばならなくなるとろくに話も出来ないとなると檀家も不安になりこの人に任せていいのかと考えるのは自然なことであった。
「放っておきなさい。 貴女が助けるから甘えるのよ。」
母としては最近まで育ててきた弟子が助けを求めたらアドバイスくらいはしてやっているが、一緒に暮らす祖母は助けるからダメになるのだと厳しいことを口にする。
寺の住職ならば全て自分でやれて当然だとも語り、親戚付き合いもろくにしなく孫が学校で友達が出来ないと悩んでも修行しろとしか言わなかった時点で祖母は父に見切りをつけていたともいえる。
おかげで宗教嫌いになってしまった祖母は自分達の葬式は無宗教のお別れ会にして欲しいと常々言ってるほどだった。
「早く離婚した方がいいのかもしれないわね。 かおりも新しい修行先見つかったし。 誰かいい人と再婚した方があの人のためかも。」
祖母の厳しい言葉に母は苦笑いを浮かべて聞いていたが、父が心底嫌いとまでは言わないが闘竜寺に戻りたいと全く思わない以上は早く離婚した方がお互いの為かと考え始める。
元々母が我慢していたのは娘の為であるが、その娘のかおりもすでに新しい修行先で上手くやっているのだ。
加えてかおりが連れてきた彼氏である横島は祖父母にも評判はよく優しい青年に見えたが、横島では闘竜寺に婿入りするのは無理だろうと母は見ていた。
一般家庭に生まれた横島が闘竜寺に馴染めるとは思えないし、仮に闘竜寺に婿入りしても自分と同じような苦労をするのは目に見えている。
せっかく六道派の中でも特に自由だと言われる美神令子を紹介してもらったのだから、このまま美神事務所で働くか横島と共に独立するのが理想なのは考えるまでもない。
令子は目立つので悪い噂もあるが、宗教系のGSだって人のことは言えなく神や仏に仕えるとは思えぬのが現実だ。
まあ横島との関係が今後も上手くいくかは別だが、せっかく娘が宗教から抜け出したのだから下手に縁を繋いだままにするよりは離婚した方が双方の為に思えるらしい。
一方一月も中旬に差し掛かろうとする頃になってもかおりの母と闘竜寺の関係は切れてなかった。
未だに弟子が困って連絡をよこしてはアドバイスすることが続いていて、最近は母が闘竜寺を離れた影響で檀家との関係が上手くいかなくなり始めてることだ。
寺にとって檀家とは寺を支えてくれる存在であり何より心を砕いて接する必要がある。
葬式仏教と言われる現代において常日頃から寺と共に生きてくれる檀家の大切さは闘竜寺とて変わらない。
寺に関係ない相談事やら愚痴などまでこぼすようなお年寄りも多いが、年配者ほど冠婚葬祭を大切にするので大切に扱わねばならない。
しかしかおりの父は檀家のお年寄りなどが闘竜寺のこれからを心配して母と娘とよく話し合うようにと勧めたり頭を下げてでも戻って来てもらったらどうだと言われたりすると、何も答えずに無表情で話を終わらせるので檀家の人達も父の人柄に疑念を抱き始めたらしい。
元々無口な人だった父は檀家とのコミュニケーションを取ったことがほとんどなく檀家の人達も以前は男は無口なくらいがいいと評価していたほどだが、母が居なくなりいざ父が自分で檀家とのコミュニケーションをとらねばならなくなるとろくに話も出来ないとなると檀家も不安になりこの人に任せていいのかと考えるのは自然なことであった。
「放っておきなさい。 貴女が助けるから甘えるのよ。」
母としては最近まで育ててきた弟子が助けを求めたらアドバイスくらいはしてやっているが、一緒に暮らす祖母は助けるからダメになるのだと厳しいことを口にする。
寺の住職ならば全て自分でやれて当然だとも語り、親戚付き合いもろくにしなく孫が学校で友達が出来ないと悩んでも修行しろとしか言わなかった時点で祖母は父に見切りをつけていたともいえる。
おかげで宗教嫌いになってしまった祖母は自分達の葬式は無宗教のお別れ会にして欲しいと常々言ってるほどだった。
「早く離婚した方がいいのかもしれないわね。 かおりも新しい修行先見つかったし。 誰かいい人と再婚した方があの人のためかも。」
祖母の厳しい言葉に母は苦笑いを浮かべて聞いていたが、父が心底嫌いとまでは言わないが闘竜寺に戻りたいと全く思わない以上は早く離婚した方がお互いの為かと考え始める。
元々母が我慢していたのは娘の為であるが、その娘のかおりもすでに新しい修行先で上手くやっているのだ。
加えてかおりが連れてきた彼氏である横島は祖父母にも評判はよく優しい青年に見えたが、横島では闘竜寺に婿入りするのは無理だろうと母は見ていた。
一般家庭に生まれた横島が闘竜寺に馴染めるとは思えないし、仮に闘竜寺に婿入りしても自分と同じような苦労をするのは目に見えている。
せっかく六道派の中でも特に自由だと言われる美神令子を紹介してもらったのだから、このまま美神事務所で働くか横島と共に独立するのが理想なのは考えるまでもない。
令子は目立つので悪い噂もあるが、宗教系のGSだって人のことは言えなく神や仏に仕えるとは思えぬのが現実だ。
まあ横島との関係が今後も上手くいくかは別だが、せっかく娘が宗教から抜け出したのだから下手に縁を繋いだままにするよりは離婚した方が双方の為に思えるらしい。