その二

「美神さん、弓さんどうですか?」

「いいんじゃない? GS試験も確実に受かるでしょうし彼女はたいした問題ないわね。」

一方美神事務所では令子とおキヌが事務所の一員となったかおりのことを話していた。

技術や知識は相応にあるので令子としては現状では特に教えることなどなく、あとは実戦経験を積みそこで必要となることや足りない部分を自ら見つけていくしかないレベルだった。


「そうですか。」

「問題があるとすればやっぱり横島クンの方よ。 なまじ実力があるだけにね。」

本人のやる気もあるし美神事務所は仕事は選ぶほどあるので、かおりが経験を積むにはさしたる問題はなく令子の負担はほとんどない。

おキヌは令子の話にホッとするも、続けて問題なのは横島だと言うと何とも言えない表情になる。


「何より本人にあまりやる気がないのが一番問題だし、やる気がなくても出来ちゃうことも問題なのよ。 当面は単独で仕事をさせるのは無理ね。 私か弓さんが着いてないと怖いわ。」

才能や実力は令子ですらも今更語るまでもなく評価しているが、一方でやる気や熱意がないのは令子を持ってしても怖いと口にするほどだ。

ルシオラの一件以降やはり横島は少し大人になったし、馬鹿でスケベなのは変わらないがあまりそれを他人に求めなくもなっている。

元々横島は令子への想いや執着にスケベ心で働いていたのでそれが薄れると、オカルトそのものへの熱意や興味も薄れてるように令子には見えていた。


「そんなにですか?」

「まあね。 霊を慈しむ心がある訳でもないし、せめてお金でも煩悩でも強い欲求がないとつまんないミスで事故を起こしそうで危なっかしいのよ。 流れ作業みたいに淡々と除霊するのも悪くないけど横島クンにそれをさせるには知識も経験も足りないのよ。」

かつてのような強い想いが無ければギリギリのところで生き残ることは出来ないだろうし、実際今の横島はある程度安定はしているが中途半端であることに変わりはないだけに余計に厄介らしい。

結局令子自身がそれを見極め横島を制御するか、横島が自ら守りたくなるようなかおりと組ませるしかないのが現状だった。

かおりは知識も基礎もあるし互いにないものを持ってるので客観的に見てバランスがいいことも確かだが。


「まあ、横島クンはもう自分から第一線クラスの最前線には立たないでしょうね。 元々そんなタイプじゃないから。」

ただ令子はこの先横島が一人前になっても、かつてのような危険な依頼で最前線に立つことは二度とないかもしれないと思っている。

かおりは令子と違い堅実で危険な依頼は受けないだろうし、元々横島が危険な依頼を好き好んで受けていた訳ではないのだから。

令子自身もそれを理解するが故に現在はかつてのような危険な依頼は受けてない。

少し寂しさが二人の心の中にはあるが、かつてのような美神事務所のチームワークはもうないのだ。

決して互いに嫌いになった訳でも憎しみ合ってる訳でもないがそれぞれが変わり変化していく中で、かつては交差していた関係が再び離れただけだろうと令子はみている。

変わらないままで居たかったという想いもあるが、人は変わり成長する生き物なのだ。

仕方ない。

令子もおキヌもそう思うしか出来なかった。



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