その二

「えーと、それじゃ来週のクラス対抗戦やけど。」

そして三学期が始まり数日が過ぎると六道女学院霊能科では定期テストのように一学期に二度あるクラス対抗戦の件について話がされていた。

基本的に選抜メンバーは担任の鬼道が決めるものの、生徒の側の意見も考慮して決められる。

ただ二年も残り数ヵ月となるとすでにGSを諦めた辞退者がそれなりに多く、クラスの半分以上はクラス対抗戦に辞退する。


「先生。 私、今回は辞退しますわ。」

ただこの日はかおりが突然クラス対抗戦への出場辞退を口にするとクラスは騒然となってしまう。

少し前までは霊能者としての実力こそ全てと言っても過言でなかったかおりは、毎回必ず出場して己の存在意義を実力で示すことによって現していたがそれもすでに必要がない。

祖父母の家で普通の家族を手にいれ念願の自由なGSへの道が開けた以上クラス対抗戦にこだわる気はなくなっていた。


「弓さん!?」

「弓……。 お前。」

「先生や皆さまのおかげで私は将来の目処が付きました。 ならば対抗戦の機会は皆さまに譲るべきだと思います。」

最早実力を見せる必要も何もない以上はクラス対抗戦への出場する機会は他の望む人に譲るべきだと決心したらしい。

そんなかおりにクラスメートは驚きというか戸惑うほどだが、最近のかおりの変化を見れば納得する者も居る。

クラス対抗戦はあくまで学内の競技会の一種であり将来に直接関係はないが、その成績は将来GSになるならば自然と注目されるし自分をアピールする場でもあった。

以前と比べてトゲが無くなったというか面倒なまでに実力を誇示する必要もなくなったかおりにはあまり必要のないもので、その霊力があるならば横島との修行にでも使いたいのが本音になる。


「でも弓さんが出ないと勝てなくなるわよ。」

「こう言うのも何なんだけど氷室さんは対抗戦に向かないし後は似たり寄ったりなのよね。」

しかしクラスメートの反応は微妙で対抗戦の出場枠が空くことを素直に喜ぶ者も居れば、単純に勝てなくなる心配をしてる者も居た。

かおり達のクラスで実力が抜きん出ているのはかおりとおキヌだが、困ったことにおキヌは対人戦闘に向かなく相手の能力次第では役に立たない。

おキヌが転校してきて以来クラス対抗戦はかおりとおキヌがほぼ決まりで三人目を争うことになっていたが、肝心のかおりが抜けるとどう考えても対抗戦に勝てなくなるのは目に見えている。

ちなみに魔理は戦い方が単調なケンカ殺法なため搦め手に弱く弱点が露呈した二回目以降はあまり活躍出来なくなっていた。

弱点が露呈したのはおキヌも同様だがネクロマンサーの能力は強力なため式神や使い魔の類いは一切効かないので相手次第では活躍していたのだが。


「そうやな。 弓は一度外れてみるのも悪くないか。 ただ経験者やし出場者にアドバイスしてくれると助かるんやけど。」

「分かりましたわ。 出場される方が望むなら私も協力は惜しみません。」

クラスは騒然としてどうするのかと軽い騒ぎになるも最終的に
担任の鬼道は今回はかおりの出場をしない方向で話を進める。

対抗戦の結果は地味に霊能科内での実力争いに関わり、勝てばそのクラスが大きな顔をして負けたらその逆になるという妙な慣例があり出来れば勝ちたいのがクラスの総意なのだ。

しかし教師としてはかおりにこれ以上の対抗戦の出場をしても得られるものがないとすれば、辞退を認める方に動くのは自然であった。



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