その二

「そう。 分かったわ。」

そしてその日の放課後になると前日に保留した横島の待遇と今後に関して事務所で話し合われるが、かおりの説得もあり同じ完全歩合制による給料に移行することにする。

元々アシュタロス戦後には横島の勤務時間は減っていて時給だけではどうにもならない状態が続いていたのだ。

これに関しては三年に進級した際に学校側から出席日数について卒業の条件が出されたことで仕方なかった部分もあるものの、以前のようにただ無駄に時給稼ぎにと事務所に長居することが減ったことも影響している。

事務所に居る際にも多少のセクハラ紛いな発言はあれど、昔のように風呂を覗くなどといったこともなく良くも悪くも今の横島は美神事務所の従業員でしかなかった。

それは横島が少しだけ大人になったとも言えるし令子との関係が変わっただけとも言える。


「ならとにかく勉強しなさい。 アンタ中途半端に無知だから怖くて一人じゃ使えないのよ。 貧乏神の時みたいなミスされると困るし。 当面は弓さんが面倒見るってことならあんた達に合う仕事受けるわよ。」

「お願いしますわ。」

仕事は主に土日を中心に入れつつ簡単で割りのいい依頼は平日の夕方以降にも入れることで話が進み、結局横島は当面かおりが面倒をみるしかなかった。

実力は令子すら超える時もある横島であるが、人の命を扱うだけに中途半端に知識を持った横島は令子でなくとも単独では使いにくい存在になる。

貧乏神を攻撃したようについウッカリなんてあるのが一番困るのだ。


「勉強っすか。」

「普通はそこまで力つける前に最低限は覚えるんだけどね。 アンタの場合特殊だから。 でもまあ私や弓さんほどあれこれ覚える必要もないわよ。 最低限の基礎でいいわ。 冥子だってほとんど覚えてなくてもやってけてるし。」

待遇も決まり令子は何処かホッとした表情をしていた。

横島自身は勉強が必要だという問題に頭を抱えているが令子は何も自分やかおりのように完璧に覚えろとまで言ってる訳ではなく、霊能者のイロハから除霊の基礎知識くらいで免許の許可は出すつもりでいる。

正直横島にそれ以上求めたら何年かかるか分からないし一般的なGSもそこまでオールマイティにやってる人は案外少ない。


「横島クンの場合は文珠が曲者なのよねー。 万能過ぎて出来ること増えるから大変なのよ。 エミは呪術だし冥子は式神だし先生はカトリック。 みんな大概は得意分野に合わせた知識を持ってるわ。 とりあえず一般霊障に絞って文珠抜きに覚えなさい。」

幸か不幸か横島は令子よりもオールマイティなタイプなだけに覚えなくてはならない知識は多いが、最低限失敗をせず知らない霊障には迂闊に関わらないことを徹底すればそれなりにやれるはずだった。


「将来どうするつもりか知らないけど弓さんはあと一年は学生だし、二人で独立するなら再来年の横島クンが成人する頃が資金的にも実力的にも目安かしらね。 あんまり焦っても失敗するし。 まあ頑張んなさい。」

このまま二人の関係が続いたとしても最短で一年かかるし開業資金を貯めるとすれば横島が成人する再来年くらいが二人の独立の目処となる。

令子としてはそこに合わせて頑張れとしか言うことはなく、後は横島のやる気次第と言えた。

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