その一

この日の東京は小春日和と呼ぶのに相応しいような気持ちのいい快晴だった。

公園では老若男女がそれぞれに体を動かしたり散歩したりと午後の時間を楽しんでいる。

そんな環境で公園内の空いたベンチに座る横島とかおりだったが、やはり座る位置は微妙な距離感だった。


「雪之丞だけど、除霊の参加はどっちでもいいってさ」

「そうですか」

つい先程までは普通に世間話をしていた二人だが、ベンチに座ると今回の用件を話し始める。

香港に居る雪之丞と連絡が取れたので横島は例の共同除霊の件を伝えたらしいが、どっちでもいいという答えしか帰って来なかった。

まあ雪之丞としてはかおりが来いと言うなら来るし、その場で新しい恋人が出来た話をするならそれでもいいとのスタンスである。

仮にみんなに非難されるなら甘んじて受けるだろう。


「相変わらず勝手ですわね」

「それが雪之丞の優しさなんだけどな~」

「それはわかってますが、それでも勝手なことには変わりありません」

雪之丞の行動が優しさであることは重々承知しているが、それでもかおりは雪之丞が勝手だと思うらしい。

全ての選択肢を女性に与え罪も罰も全て受け止めるとの雪之丞の考えは男からすると理解出来る行動だが、女のかおりからすると勝手に思えるのかもしれない。


「それでどうする? まだ悩んでる?」

「全て話そうかと思ってます。 いずれ真相がどこからか漏れるならば、私から話した方がいいと思いますから」

そして横島はいよいよ雪之丞との件をどうするかをかおりに尋ねるが、かおりは落ち着いた様子で全てを話ことに決めたと告げる。

最終的にかおりはこの問題の秘匿を諦めたようだった。

雪之丞と別れた以上、おキヌや魔理やタイガーが異変に気付くのは時間の問題なのだ。

嘘に嘘を重ねて真相を解らなくすることも不可能ではないだろうが、そこまでして何を守るのかをかおりは分からなくなっていた。


「それが一番無難かもな。 下手な嘘を重ねるよりは新しい恋人でも見つけて幸せになった方が早いと思う」

かおりの決断を横島はホッとしたように受け止める。

嘘に嘘を重ねて過去を守るよりは、割り切って未来に進んだ方がかおりの為なのは明らかなのだ。


「氷室さん達と雪之丞の今後に下手なしこりを残さない為にも、雪之丞と一緒に皆さんの前で堂々と別れを報告するべきかと考えてます」

「雪之丞を悪者にするのは嫌か? 弓さんらしいな」

雪之丞は自分が悪いのを理解しており悪者になるつもりだが、かおりは雪之丞を悪者にして自分が被害者になるのは嫌なのだと横島は理解していた。

ある意味プライドの高いかおりらしい決断だとも思う。

そんなかおりの決断により横島とかおりはいつみんなに報告するかを相談するが、やはり報告は共同除霊が終わってからがいいという意見になり共同除霊が終わった後に報告することに決める。



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