その二

「ごめんなさいね。 突然。」

「いや、全然構わないっすよ。 家に帰っても一人で飯食うだけですし。 ただ嫌われてないか不安ですけど。 俺あんまり初対面の人の印象良くないみたいっすから。」

結局横島は食事をご馳走になり帰ることになるが見送りにと外まで出てきたかおりと少し話し込んでいた。

かおりは少し強引かなと気になっていたらしく謝っていたが、横島はそこは特に気にしてないものの母や祖父母に嫌われてないか不安な様子である。

昔からあまり初対面の人にいい印象を持たれないことが多い横島としては家族に反対されたらと考えると不安らしい。


「大丈夫ですわよ。 少なくとも嫌われてはないと思います。 それに父が真面目ではあったものの融通が効かないタイプてましたから。 逆のタイプですし気に入ってくれたかもしれませんわ。」

そんな横島にかおりは初対面の時の横島を思い出したのかクスクスと笑ってしまうが、少し真面目な表情になると大丈夫だといい横島を安堵させる。

正直なところ本人が思うほど横島は嫌われてないのだが、苛烈な母親や天の邪鬼な令子の影響もあり自分に対する自信は相変わらずない。

対するかおりとしてはこれで終わりではなく始まりだと考えていて、いずれ会うだろう横島の両親を含めて仲良く出来ればと考えていた。

父は真面目で誠実ではあったものの母方の祖父母との折り合いが悪く子供ながらにかおりは辛い思いをしたので、自分が付き合うならば家族ぐるみで仲良くしたいとの思いが強い。


「優しそうな子ね。 でも正直霊能者にするには少し不安かも。 優しさが仇となる業界だから。」

そのままホッとした横島を見送って自宅に入ったかおりであるが、母は横島のことを優しそうだと評価する一方で霊能者としては少し不安も感じていたらしい。

母自身は霊能者ではないが多くの霊能者の弟子を生活面から育てて来た経験もあるし、業界内の付き合いもそれなりにしていた。

それ故に横島の資質を半ば見抜いていたが、同時に霊能者にするには横島は優しすぎるのではとの不安を口にしている。

優しさだけで霊や妖魔を救うことなど不可能であり、時には理不尽な理由でも強制的に除霊や退治をしなくてはならないがそれが出来ずに辞めていく霊能者が現実には存在した。


「可哀想でも時には見捨てることも必要だけど彼にそれが出来るかしら? なまじ才能があり出来てしまう故に心配だわ。 よそ様の弟子だし私が口を挟むことじゃないけど。」

まあ母は闘竜寺という名門で精神的にも修行を積み鍛えられた者達を見ていたが故に少し心配になったらしいが、かおりは母の心配があながち的外れではないことを理解している。

ただかおりとすれば自分が支えてやるべきだと覚悟を決めているので今更迷いはしないが。


「それより避妊だけはちゃんとしなさいね。 若いんだしするのは仕方ないけど。」

「お母さん! 私達はまだそんなことは……。」

ちなみに祖父母には聞こえぬように小声で避妊の必要性を説く母にかおりは抗議するも、母は笑っているだけでそれ以上追求しなかった。


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