その二

その後お茶を出された横島はそのままの流れで当然のように自分の分まで夕食が出たことで、もしかしたら来る前から準備をしていたのかもしれないと気付くが戸惑いはするが悪い気はしなかった。

かおりも悪戯が成功したと言わんばかりの茶目っ気のある笑みを浮かべてることも悪い気がしない理由であるが。


「その年齢でGS免許取得出来たのは凄いわね。 私も闘竜寺で何人も弟子を見てきたけど十代で免許取得出来た子は何人も居ないわ。」

「いや~、まぐれって言うかなんと言うか。」

加えて横島としては最近は収入が安定したとはいえ食事はインスタント食品か弁当や牛丼を買うくらいなので温かい家庭料理は大歓迎である。

あまり図々しくならないようにと気を付けながらも食事をしながら会話をしていくが、話題は横島の自己紹介のような内容から始まり霊能関係に移っていた。

やはりGS免許の存在が注目され誉められたのだが、横島としては誉められなれてないせいか笑って誤魔化しながら答えている。


「横島君、何でもありな業界だけどGS試験だけはまぐれはないのよ。 その時々の受験者のメンバーによってレベルが高いときとそうでない時はあるけど。」

「へ~、そうなんっすか。」

「GS試験だけは外部からの影響はもちろんのことGS協会の意向なんかまでもが完全に排除されてるわ。 実は昔は裏金とか呪いとか術でインチキしようとした人が絶えなかったから現在の形になったらしいけど。」

ただかおりの母自身は霊能者で無かったとはいえ業界に二十年近く居たので当然横島よりもGSに関しては詳しい。

笑って誤魔化すためとはいえGS試験の合格をまぐれだと語る横島の無知さというか素人さには当然気付いたようで、母は横島に恐らく知らないだろうGS試験の事情を語って聞かせる。

まあかおりからもある程度横島のことは聞いているので横島があまり業界に詳しくないことは事前に知っては居たが、それでもまさかGS試験のことすらあまり知らないことには流石に驚いたのが本音だろう。


「将来はGS事務所を持つのかい?」

「まだ決めてませんね。 未熟なんで自分にやれるかわかりませんし。」

「焦らん方がいい。 今はGS以外にも仕事があるからゆっくり考えなさい。」

それと祖父母の方だがこちらも横島を歓迎しているが、その一因として横島が宗教には無縁の美神令子の弟子だという事情もあったりする。

闘竜寺で苦労する娘を見てきた祖父母からするとオカルト業界も宗教もこりごりらしいが、孫のかおりがGSを目指す以上は非宗教のGSでありながらすでに免許持ちの横島は将来有望な男に見えるのだろう。

特に祖母は横島にどこの宗教かと聞いたほどであり、祖母の宗教嫌いは相変わらずらしい。


「よかったね、かおり。 普通のいい人見つかって。」

「もう、お婆ちゃん!」

それに腰が低くて変なプライドもない横島はかおりの父とは正反対であり、以前かおり自身が語った祖父母のように普通の家庭が欲しいという孫の相手にはピッタリだと思ったらしくそれも嬉しいらしい。

祖父母は六十過ぎくらいの年齢でまだ老け込むには早いが、それでも先が長い訳ではない。

娘と孫のこの先を案じるが故に優しげな横島でよかったと本心から思うようであった。


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