その二

「へ~、ここが今住んでるとこっすか。」

その後ショッピングを終えた横島とかおりはゲームセンターにて少し遊んで帰ることにするも、かおりの荷物が結構あることから横島は自宅まで送って来ていた。

闘竜寺には何度か送って行ったこともある横島であるが、今かおりが住んでる家はごく普通の一般的な民家であり少しホッとする。


「あら、おかえりなさい。 そちらは?」

ただこの日は荷物があることもあり玄関まで入り荷物を置いて帰ろうとしたのだが、かおりの母が出迎えると流石に緊張するのか横島の表情が硬くなった。


「えーと、横島さんですわ。」

「あらあら、ごめんなさいね。 荷物なんか持たせちゃって。 さあ、上がって。 寒かったでしょう?」

優しげな笑顔でかおりを出迎えた母はかおりに横島を紹介させると当たり前のように少し強引に家に上げようとして横島を困らせる。

母の容姿はかおりと似ているが、かおりより優しげな感じで年相応の女性か少し若い感じだろう。


「いや、もう遅いんで失礼します。」

「いいのよ。 遠慮しなくて。 そうだわ。 夕食でも食べて行ってね。」

冬の日暮れは早くもう外は薄暗いので横島は遠慮というか突然のことに戸惑い半分逃げるように丁寧に断り帰ろうとするも主導権は母にあり、せっかくだからと言われると断れずに家に上がることになってしまった。

もちろん横島は彼女の家に行くなど初めてで戸惑っているという方が正しいが、いくら横島でもかおりと付き合っていく上で誰を味方に付けなければいけないかは理解している。


「祖父母ですわ。」

「いらっしゃい。」

「二人とも寒かったたろ。 暖まりなさい。」

出来ればかおりに助けて欲しいところなのでチラリと見るが、かおりもまたお茶くらいはと横島を家に上げようとしていて横島にはどうしようもない。

まあかおりとしては妙神山に最初行った時に驚かされたのでお互い様だと考え、少し悪戯するように実はさりげなく狙って家に連れて来たのだという裏があったが。


「初めて、横島っす。」

そのまま家に上がらせてもらう横島にかおりは祖父母も紹介して暖かい部屋で飲み物を出されて座ることになるが、くつろぐことはもちろん出来ないし何を話していいか分からない。

完全に立場は妙神山の時と逆になりかおりは少し笑ってしまうが横島にそんな余裕はなく、何故かおりがクスクス笑うのかすら理解出来ないでいる。


「貴方と会うようになってからこの子本当に明るくなってね。 私も是非会いたかったの。 高校生なのに修行ばっかりさせて世間を知らないなんてダメだもの。」

「お母さん!」

とりあえず出されたお茶を飲み以前の横島からは考えられないほど大人しくしてるが、そんな横島に対しかおりの母は積極的に声をかけていた。

母は横島の知らぬ家庭でのかおりを語り恥ずかしいのかかおり自身は止めさせようとしたりするも、祖父母が笑っているので恐らく日頃からこんな感じなのだろう。

なんというか横島の知る弓かおりのイメージとかなり違うことに驚くも、ある意味よくある普通の家族でホッとする気持ちもやはりある。

横島の母や美神美智恵のようなタイプは横島自身苦手なので尚更優しげな母が羨ましくもあった。


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