その二

「本当にいいんっすか?」

そしてそれから数日が過ぎた大晦日になると、かおりは母と一緒に手作りしたおせち料理などのごちそうを持って横島の部屋に来ていた。

それらは年末年始も何も予定がない横島への差し入れであり、今回はかおりではなく母が持って行ってあげなさいと用意してくれた物になる。

幼い頃から母とは仲がいいだけに横島と正式に付き合うことにしたことも当然話しているかおりであるが、母はまだ会ったこともない横島との交際を今も応援してくれているのだ。


「ええ、お正月におせちも何もないのは寂しいでしょう。」

かつては男の独り暮らしそのものと言えた横島の部屋も最近は修行という目的もあって毎日来ている影響ですっかり小綺麗になっており、かおりはすっかり慣れた様子で冷蔵庫に持参した料理を入れており横島はそんな彼女の後ろ姿を眺めつつ恋人が出来た喜びを噛み締めている。


「すぐ帰るんっすか?」

「三時くらいまでなら居れますわよ。」

料理を冷蔵庫に入れて横島にいつまでに食べるようにと説明するとこたつに入り一息つくも、大晦日のこの日は流石に修行しようというつもりはないらしくこのあとどうしようかと相談を始める。


「少し街をぶらつきますか?」

「んっ!? ……そっ、そうですわね。」

ただ横島はこの間もかおりの肩に手を回していて、話をしながらもかおりにキスをしたり抱き締めたりと好きなことをしていた。

初めてのキスから数日が過ぎたが修行という名目があることで今のところ毎日会っているので、当然その回数は増えていて慣れて来たこともあり少しずつ横島は大胆になっていて隙あらば求めるようになっている。

まあ行為自体は横島も自重しているようなので、まだあまり進んでなく横島が服の上から抱き締めるついでにそれとなく触るくらいだったが。

しかしかおりとすれば男の本能に近い一面を少し甘く見ていたかもしれないと横島に抱き締められながら感じてもいた。

父親やその弟子で男性を知ってるつもりだったし横島の部屋にエロ本なんかがあるのも風邪の看病をした時に見ていて、そっち方面の情報だって今時の女子高生なのだからそれなりに知っていたが実際に付き合ってみるとまた感じ方は違っている。

なんというかもう少し余裕を持って欲しいと思わなくもないが、横島も自重してることは理解してるのであえて指摘はしてない。

一応それなりに覚悟は決めているが彼女自身もまだ横島との新しい距離感に戸惑ってる部分もない訳ではなかった。


「そろそろ出掛けますわよ!」

少しずつ大胆になる横島に耐えられなくなったかおりが顔を真っ赤にして出掛けようと言うと、横島は少し残念そうな表情をするも素直に従い二人は大晦日の街に出掛けることになる。


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