その一

それから三日後、雪之丞から連絡を貰った横島は再びかおりと会う為に待ち合わせをしていた。

当初横島はかおりに電話で雪之丞と連絡が取れたことを伝えるのみのつもりだったのだが、かおりから会って相談したいと言われて待ち合わせをすることになっている。

場所は美神事務所や横島の学校や六道女学院から数駅離れた駅であり、横島は学校帰りにそのまま来ていた。


「お待たせしました」

「俺も今来たとこだよ」

そんな横島から遅れること十分ほどでかおりも待ち合わせ場所に現れるが、彼女はきっちり約束の時間の五分前である。


「どうするまたカラオケ行くか?」

「今日は天気もいいですし近くの公園でいいですわ」

合流した二人はゆっくりと歩き始めて行く先を話すが、この日は天気もよくわざわざカラオケに行く必要はないとかおりが言い出す。

横島はもちろんだが、実はかおりも正直さほどお金がある訳ではない。

高校生として人並みに小遣いは貰ってはいるが、話をするだけでわざわざカラオケに行くのは少しお金が勿体なかった。

ちなみに前回のカラオケ代はそれぞれが自分で払っている。

当初は横島も見栄を張って奢ろうとしたが、かおりはかおりで相談に乗って貰ったのは自分だから自分が払うと譲らなかったのだ。

結局はかおりも折れて双方が自腹にすることで収めたが、今日はカラオケに行く必要はないかと考えたらしい。


「俺は構わんけど、俺なんかと一緒に居て、誰かに見られたら弓さん困らんか?」

「構いませんわ。 街で偶然会ったのでお茶をしたと言えばいいだけです。 それに困るのはどちらかと言えば横島さんでは?」

「俺は慣れてるからどっちでもいいよ。 俺が責められるのは日常茶飯事だから、その理由が毎回変わるだけだ」

近くには割と大きな公園があり二人はそこに向けて歩くが、横島はかおりを心配する一方でかおりも横島を心配していた。

雪之丞と別れた日のことが予想以上に大きくなったので当然の心配とも言えるが、かおり自身はバレた時はバレた時でいいのではと思い始めている。

やましい関係ではないのだし正々堂々としてればいいと考え始めたらしいが、一方で横島が周りから責められることは心配していた。


「意外と冷めてますわね」

「俺が責められるのは年中行事だからな。 弓さんの件がなかったら別の理由で吊るし上げにされるだけなんだわ」

ただ横島としては自分と一緒のところを見られるとかおりが恥ずかしいのかと心配しており、自分のことはどうでもいいらしい。

半ば投げやりに責められる理由が変わるだけだと笑う横島に、かおりは横島が思った以上に周りに対し冷めてるとの印象を受ける。

特に見下してる訳ではないようだが、横島の言葉は周りに何も期待してないとの印象も強い。

かおりは横島が何故誤解を解かなかったのか、なんとなくだが理解した気がした。


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