その二

「ダメっすかね? 神父。」

「場所を貸すくらいならば構わないよ。 教えることはあまり出来ないけどね。」

翌日になると妙神山から戻った横島とかおりの二人は唐巣の教会を尋ねてとあるお願いをしていた。

唐巣とは数回面識がある程度のかおりは少々申し訳なさげにしているが、横島が唐巣の教会を尋ねて頼んだのは修行場所として教会の庭を貸して欲しいというお願いである。

前日に妙神山にて修行をしたかおりは闘竜寺を出たことで小竜姫に今後の修行の相談に乗ってもらったのだが、小竜姫は幾つかの修行内容と共に修行効率を上げるならば横島と一緒に修行をしたらいいとアドバイスしていた。

その結果あまり修行をやる気がない横島に頼み一緒に修行することを同意させることに成功したかおりであるが困ったのは修行場所であった。

かおりの現在住む祖父の家には修行するようなスペースはなく横島のアパートは論外なため、横島と二人で考えた末に横島が唐巣の教会ならいいんじゃないかと頼みに来ている。

修行場所の候補は美神事務所も考えたのだが美神事務所の場合は屋外は事務所の入り口の前しか修行出来るスペースがなく、隣にオカルトGメンがあったりとオフィス街な為目立つので修行には不向きであったのだ。

その点唐巣の教会はそこそこの庭があり一応簡易結界も張っていてピートが修行に使っていることを横島が聞いていたために候補として上がっていた。

かおりとしてもあまり関係ないGSには頼めないが横島が事実上唐巣の孫弟子にあたる関係なため、横島が頼めるならばと反対はしなかったらしい。


「すいません。 お世話になります。」

「何もお構い出来ないが好きに使ってくれていいよ。」

闘竜寺を出てしまったことなど簡単に説明したかおりだが、唐巣はそのことには特に触れずに修行場所の提供を快く引き受けている。

一緒に話を聞いていたピートは少し前から学校で騒ぎになっていたので横島とかおりの関係は当然知ってはいたが、改めて二人一緒の姿を見ると流石に驚いていたが。


「ここならピートも居るし修行相手には困らんからな。 ピートも頼むよ。」

「僕もですか? まあいいですけど。」

ちなみに横島は修行相手にとピートも引き込むことでかおりの修行に役立つだろうと勝手に期待していたが、唐巣同様お人好しのピートは断れるはずもなく引き受けていた。


「おわっ! そりゃ!」

「なんか動きが不自然なんですよね。」

「横島君は基礎とかそういうことしないでここまで来たからね。」

結果として唐巣が見守る中、横島とかおりはピートを巻き込み基礎から組み手まで幅広く修行するが基礎とかセオリーとかほとんど無視してる横島にかおりは困惑の表情を隠せない。

小竜姫も霊力を扱う基礎は学ぶようにと横島に言ったが動きや攻撃手段まで自己流の横島は強いことは間違いないのだが、無駄な動きなんかも多く修行だけ見ているとお世辞にも実力者には見えない。

別にかおりは直せとまでは思わないもののこれでいいのか疑問は感じていて、見ていた唐巣も横島が特殊なのは認めて苦笑いを浮かべていた。



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