その二

「本当にいいのね?」

「……はい。 今ここで拒絶したら私は二人と友達で居れることすら出来なくなってしまう気がするんです。 だから私は逃げたくありません。」

一方令子は氷室家に帰省中のおキヌから電話にてかおりの扱いについて返答を聞いていたが、おキヌの答えは出来るなら受け入れて欲しいというものだった。

正直令子としては受け入れても問題はあるし受け入れなくても問題になるだろうと見ていて、どちらにしても厄介なことになると日に日に気が重くなっている。

令子自身はすでに横島との関係をある程度割り切っているので横島の将来を考えれば受け入れてもいい気はするが、気掛かりなのは未だ横島への想いを完全に割り切っていないおキヌの気持ちだった。

ちなみにかおりと横島が正式に付き合い出した話に関して令子はおキヌから聞いていて、事務所自体はもう年末年始の休みなので令子もまだかおりと付き合って以降の横島とは会ってすらいない。

二人の関係が親密なのは以前から聞いていたし見ても居たので理解はしていたが、まさかこれほど早く正式に付き合うとは思いもしなかったと言うのが令子の本音だ。

しかもルシオラの子供への転生すら聞いていて受け入れたという話は正直信じられなかったほどである。


「横島君からは無理よね。 ということはそれだけ彼女が……。」

二人の関係について言い方は悪いが半分は未成年の恋愛ごっこのような浮わついたものではと令子自身疑っていたし、事実横島はそこまでかおりを強く求めて自分から告白したとは思えない。

横島の中には今もルシオラが居て皮肉なことにそれを一番感じていたのは令子とおキヌなのだ。

恐らくかおりの方が痺れを切らしたのだろうと思うが、横島もまたそこでルシオラのことを話した辺り彼女に対しての想いも決して軽くは無かったのだろう。


「強くまっすぐな女が横島君は好きなのかもね。」

結果としてかおりは全てを受け止め横島もまたそんなかおりに答えてしまった。

鳶に油揚げを拐われたような感じもするが、横島と令子やおキヌの関係は良好ではあったがルシオラが引いた線が出来て以降は互いにその線を越えぬ関係である程度満足してしまったのが全てだろうと令子は思う。

友人として恐らく悪い関係ではないのだろうし令子自身はそれもまあいいかと思う部分もあるのだが。


「本当面倒なことになったわね。」

最終的に逃げたくないというおキヌの想いも理解するし、ここで逃げたらおキヌは横島とかおりから離れるしか無くなる。

だが身近で二人を見守ることがおキヌに出来るかが令子は不安だった。

それは恐らく悩んでも答えの見つからないものであり令子が気に入らないからと断っても、おキヌと横島達の溝は深まるだけだろう。

本当に面倒なことになったと何度目か分からぬため息をつくも決めねばならない時は確かに近付いていた。



36/100ページ
スキ