その二

「今この場では正確にどう答えていいか分かりませんが、私はやはり現在とそしてこれから先を見ていきたいと思っております。 ルシオラさんという方のこともそしてパピリオさん貴女のことも。 これから改めて一から向き合うつもりですわ。」

アシュタロス関連の話は随分と長くなりお昼を挟んですでに午後になっていた。

ある程度の話を聞き終えたかおりは不安げなパピリオに自身の考えを素直に口にする。


「それにあの時のことは元々あまり気にしてませんでしたわ。 霊能者である以上負けたのは己の力不足でしかありませんから。 負けた己を恥じることはあっても勝った者を恨むような見苦しいことは致しません。」

今でこそ父とは離れる形となったがそれでもかおりは霊能者としては今も父を尊敬しているし、そんな父の教えによる霊能者としての基本的な価値観や考えを全て変えた訳ではない。

例え邪悪な悪霊や妖魔といえど常に慈悲の心で向き合うという霊能者の基本とも理想とも言えることをかおりは守っている。

現に自分を襲った魔族が横島の想い人だと聞いても特に恨みも何もなかった。


「貴女やっぱり小竜姫が気に入る訳だわ。」

横島の過去はかおりといえどやはりすぐには答えが出るものではない。

しかしルシオラやパピリオとのことは自分なりに消化していて、不安げなパピリオにかおりは自ら手を差し伸べるとパピリオと握手して敵としてではなく一人の個人として向き合うことを約束する。

それは同じ神族にすら堅物と言われる小竜姫に似て少し無器用だが真っ直ぐな性格と価値観であり、ヒャクメは今日この場で小竜姫がわざわざ横島との関係を取り持つようなことをした訳を理解した。

横島や令子と知り合い多少世の中に揉まれた小竜姫であるが元来の生真面目な性格もあり、かおりのような自分に似た真っ直ぐなタイプが小竜姫は気に入る傾向があるのだ。


「お二人はいいGSになりますよ。」

「あの、小竜姫様。 俺まだGSになるって決めた訳じゃ……。」

「あら、では彼女一人にGSをやらせるんですか?」

「いや、それはまだ先の話ですしなんとも。」

その後は緊張感漂う話がようやく一息つき小竜姫は横島とかおりの将来を楽しみだと口にするも、横島が未だ将来を決めかねていてGSになると小竜姫に太鼓判を押されると困ったような表情で反論する。

ただ現実問題として横島がかおりと付き合っていく上でGSになるかどうかは避けられない問題であり、かおりにGSをさせて横島は別の仕事に着くのかと言われると何とも言えなかった。


「うむ、GSになるならないはともかく少し力をつける必要はありますね。 ではさっそくお二人には修行を付けてあげましょう。」

「ゲッ。 俺は別に修行は……。」

「小竜姫様に修行を付けて頂けるのに断るなど恐れ多いことを。 」

「そうですよ。 さあ参りましょう。」

いろいろ考えねばならないことはまだまだあるが、アシュタロスとルシオラのことを話終えた横島は少しスッキリした表情をしていた。

そして小竜姫はやはり悩みながらも全てが受け止めようと覚悟を決めるかおりを好ましく思い、これからの為にと横島とかおりの二人に修行を付けると張りきって言い出すと渋る横島と喜ぶかおりを連れて修行場に移動する。

人を導き修行を付けるのが好きな小竜姫らしい行動であるが、横島としては別修行をしたいと思わないらしく困っていたが。



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