その二
「それにしても横島さんに彼女が出来るなんてね。」
「わざわざ言われんでも俺が一番驚いてるわ!」
前回と同じく妙神山の母屋に案内された横島とかおりであるが、相変わらず横島は小竜姫にもヒャクメにもフレンドリーというか軽い調子でありかおりを密かに困惑させたりハラハラさせていた。
積み重ねた常識がそう簡単に変わるはずもなく、また変えていいのかかおりには分からない。
ただ彼女が出来たとからかうヒャクメの様子はおキヌのように重苦しい感じではなくホッとしてもいるが。
「……あの時はごめんでちゅ。 ルシオラちゃんのこと嫌いにならないで……。」
「あの……。」
「貴女を以前襲ったことですよ。 横島さんの彼女になるならきちんと謝りたいからと。」
そんなかおりだが到着してかおりが持参したケーキでお茶にしていると今日来てからずっとチラチラと視線を向けていたパピリオが突然ペコリと頭を下げて何かを謝りかおりを驚かせる。
子供とはいえ魔族が人間に頭を下げるなんて信じられず、しかも何を謝っているのか分からぬかおりは困った表情で横島を見るが代わりに答えたのは小竜姫だった。
「ああ、あの時の……。」
「横島さん、まだあの事件のこときちんと話してないのでしょう? ちょうどいいのでこの場で話してしまいましょう。 彼女は受け入れる覚悟を決めたのです。 今度は貴方が覚悟を決めて話すべきですら、 それに今のうちにきちんと話して疑問や蟠りは極力減らすべきですから。」
ただかおりは正直神族の小竜姫達への対応ですらいっぱいいっぱいで魔族のパピリオにどう答えていいか分からない。
そもそも現状では横島が今も愛してるというルシオラという魔族の妹でアシュタロスの元部下であることなど断片的な情報しか知らないのだ。
そんなかおりに対して小竜姫はアシュタロスとそれに関わる事実を全て話すようにと横島に問いかけ、少し迷う横島を押しきるように自身が口火を切り話を始めた。
「なんと言いますか、人の価値観で判断出来ることではないですわね。」
「それは私も同じですよ。 真相を知る者は多かれ少なかれ悩むことだと思います。」
小竜姫が始めたアシュタロスと横島に関する話は神族調査官のヒャクメと横島本人を交えて続いていったが、アシュタロスという最上級魔族の真意と真実は人の価値観で判断出来ることではないとかおりはどう答えていいか分からぬようである。
特に元々仏教の教えを学んだかおりとすればそこまで神魔をイコール善悪として見ては居ないが、それでも魔族の存在は神族と対となるべき存在として世界に必要なのだという人間界ではほとんど知らされてない真実はやはり衝撃だった。
まあ人間界に真実が知られてないのは人間側にも神族の側にもその方が都合がいいからで、人間側で言えば仏教系はともかく一神教の宗教がそれを認めることが出来るはずがないのは曲がりなりにも宗教に身を置いたかおりにはよく分かっている。
「横島さんが世界を救ったと。」
そして何よりかおりを驚かせたのは、やはりアシュタロスとの戦いにおいては令子よりも横島が戦い結果的ではあるが世界を救ったという事実は最早おとぎ話でも聞いてるようであまりの驚きに真実味があまり感じられなかったほどだ。
「少なくとも横島さんには選択を選ぶチャンスがありましたから。 世界かルシオラさんか。 仮に横島さんがルシオラさんを選んでも誰も文句は言えないでしょうし。 私達に至ってはその場に居ることすら出来なかった訳ですから当然ですけど。」
横島の口数はあまり多くはない。
すでに事実はヒャクメにより報告書という形に纏められているので客観的な事実として淡々と説明する小竜姫とヒャクメに横島が口を挟む余地はなかったとも言えるが。
ただ思い出すとやはり今も消えぬ後悔が胸に突き刺さっているだけに、かおりにどう話すべきか迷い横島一人では上手く話せなかったであろう。
「わざわざ言われんでも俺が一番驚いてるわ!」
前回と同じく妙神山の母屋に案内された横島とかおりであるが、相変わらず横島は小竜姫にもヒャクメにもフレンドリーというか軽い調子でありかおりを密かに困惑させたりハラハラさせていた。
積み重ねた常識がそう簡単に変わるはずもなく、また変えていいのかかおりには分からない。
ただ彼女が出来たとからかうヒャクメの様子はおキヌのように重苦しい感じではなくホッとしてもいるが。
「……あの時はごめんでちゅ。 ルシオラちゃんのこと嫌いにならないで……。」
「あの……。」
「貴女を以前襲ったことですよ。 横島さんの彼女になるならきちんと謝りたいからと。」
そんなかおりだが到着してかおりが持参したケーキでお茶にしていると今日来てからずっとチラチラと視線を向けていたパピリオが突然ペコリと頭を下げて何かを謝りかおりを驚かせる。
子供とはいえ魔族が人間に頭を下げるなんて信じられず、しかも何を謝っているのか分からぬかおりは困った表情で横島を見るが代わりに答えたのは小竜姫だった。
「ああ、あの時の……。」
「横島さん、まだあの事件のこときちんと話してないのでしょう? ちょうどいいのでこの場で話してしまいましょう。 彼女は受け入れる覚悟を決めたのです。 今度は貴方が覚悟を決めて話すべきですら、 それに今のうちにきちんと話して疑問や蟠りは極力減らすべきですから。」
ただかおりは正直神族の小竜姫達への対応ですらいっぱいいっぱいで魔族のパピリオにどう答えていいか分からない。
そもそも現状では横島が今も愛してるというルシオラという魔族の妹でアシュタロスの元部下であることなど断片的な情報しか知らないのだ。
そんなかおりに対して小竜姫はアシュタロスとそれに関わる事実を全て話すようにと横島に問いかけ、少し迷う横島を押しきるように自身が口火を切り話を始めた。
「なんと言いますか、人の価値観で判断出来ることではないですわね。」
「それは私も同じですよ。 真相を知る者は多かれ少なかれ悩むことだと思います。」
小竜姫が始めたアシュタロスと横島に関する話は神族調査官のヒャクメと横島本人を交えて続いていったが、アシュタロスという最上級魔族の真意と真実は人の価値観で判断出来ることではないとかおりはどう答えていいか分からぬようである。
特に元々仏教の教えを学んだかおりとすればそこまで神魔をイコール善悪として見ては居ないが、それでも魔族の存在は神族と対となるべき存在として世界に必要なのだという人間界ではほとんど知らされてない真実はやはり衝撃だった。
まあ人間界に真実が知られてないのは人間側にも神族の側にもその方が都合がいいからで、人間側で言えば仏教系はともかく一神教の宗教がそれを認めることが出来るはずがないのは曲がりなりにも宗教に身を置いたかおりにはよく分かっている。
「横島さんが世界を救ったと。」
そして何よりかおりを驚かせたのは、やはりアシュタロスとの戦いにおいては令子よりも横島が戦い結果的ではあるが世界を救ったという事実は最早おとぎ話でも聞いてるようであまりの驚きに真実味があまり感じられなかったほどだ。
「少なくとも横島さんには選択を選ぶチャンスがありましたから。 世界かルシオラさんか。 仮に横島さんがルシオラさんを選んでも誰も文句は言えないでしょうし。 私達に至ってはその場に居ることすら出来なかった訳ですから当然ですけど。」
横島の口数はあまり多くはない。
すでに事実はヒャクメにより報告書という形に纏められているので客観的な事実として淡々と説明する小竜姫とヒャクメに横島が口を挟む余地はなかったとも言えるが。
ただ思い出すとやはり今も消えぬ後悔が胸に突き刺さっているだけに、かおりにどう話すべきか迷い横島一人では上手く話せなかったであろう。