その二

「あら美味しそうですね!」

それから数日後の年末のとある日、横島とかおりは小竜姫に迎えに来てもらい妙神山を訪れていた。

かおりは正装にするべきかとかお土産というか貢ぎ物は何がいいかとか散々悩んだが、最終的には横島が堅苦しい服でなくていいと言ったのであまり派手でもなく失礼にも当たらない服にしていてお土産としてケーキを持参している。


「ありがとうございます。 最近の人間の街は食べ物が美味しくて好きなんですよ。」

「小竜姫様前に言ってたっすからね。 お金とか美術品とか貰っても困るって。」

相変わらず小竜姫の姿を見ると緊張で固まるかおりであるが、小竜姫の瞬間移動で妙神山に行くとさっそくお土産を渡して喜ばれると本当に甘いものが好きなんだと理解してほっとして少し落ち着く。


「気持ちは嬉しいんですよ。 ただあまり興味はないものは倉に仕舞ったっきりになりますけど……。」

まあかおりからすると妙神山に行き貢ぎ物はケーキだったなんて同業者に知られたらギャグにもならないと笑われるかと思うも、小竜姫は横島よりは言葉を選びつつも興味がない物は邪魔になってるようなのは確かだった。


「ハーイ、始めまして。 私は神界の調査官をしてるヒャクメなのね。」

「はっ、始めまして。 弓かおりと申します。 その節は本当にお世話になりました。」

さてこの日の妙神山には何故かヒャクメが来ていて到着早々かおりを見つけると挨拶をしつつジロジロと見ている。

かおりはまたもや新しい神様が現れてガチガチに固まるが、そう言えば雪之丞の件で力を借りた神族の名前がヒャクメだったと思い出して慌てて頭を下げた。


「うふふ、横島さんの彼女にしては真面目なのね。 小竜姫が気に入る訳だわ。 困ったことがあればいつでも相談に乗るのね。 特に横島さんの浮気とか。」

「おい、ヒャクメ!?」

ただヒャクメはガチガチに固まるほど緊張したかおりを面白そうに見つつ横島との関係をすでに把握しているらしく、からかうようにあっさりとぶっちゃけてしまう。


「私達も心配していたんですよ。 ルシオラさんのことも大切でしょうが横島さんは今を生きねばなりませんから。」

横島はヒャクメの言葉に慌てるように動揺してしまいヒャクメはしてやったりと笑みを浮かべるも、小竜姫はそんなヒャクメを呆れたように見つつも横島のことを心配してのことだと告げる。

実際小竜姫やヒャクメには出来ることは少ないがルシオラの件と横島のことは心配していた。

令子やおキヌは受け止めてやることが出来ずに過去の関係を引きずったまま、時間ばかりが過ぎていくことに不安もない訳ではなかった。


「弓さん、貴女も一人で全てを抱える必要はありませんよ。 悩み不安になるならば私達が相談相手になりますから。」

そして小竜姫は緊張しながらも親しげに話す横島とヒャクメを少し羨ましそうに見つめるかおりに、令子やおキヌのように抱え込みすぎてしまわぬようにと優しく声をかけていた。


32/100ページ
スキ