その二

いつの間にかデジャヴーランドは夜を迎えていて真冬の夜空に花火が打ち上がっていた。

吹き抜ける風が身体を芯から冷やすほど寒いこの夜、温かい飲み物を飲みながら二人は真冬の夜空に咲く花火を静かに眺めている。

結局あのあとルシオラのことは双方共に口にすることなく普通にデジャヴーランドを楽しんでいた。

横島にもかおりにも少し考える時間が必要だとも言えるし、厳密に言えばまだ二人には子供を産むかどうかという話は時期尚早だということでもある。

それに正直なところ二人にはGSのことや将来のことなどその前に考えるべきことがまだまだあり、この日は二人でゆっくり考えて行こうということだけで十分であった。


「あの、これクリスマスプレゼントっす。」

「私からも……。」

そんな花火も終わりに差し掛かる頃になると横島が用意していたクリスマスプレゼントを手渡すと、かおりからもお返しにとプレゼントが渡された。

実のところかおりも明確に今日告白しようと決めて来た訳ではないが、当然ながらかおりも用意していたらしい。

ただ二人とも何故か告白前より少しよそよそしい感じがあり言い方を変えれば初々しい様子にも見える。

ルシオラの時には大胆というかかなり積極的だった横島も流石にあの後の別れが影響したのか大人しいし、かおりにしても恋人という関係を更に意識したからか少し大人しい。


「また来ましょうか。」

「……そうですわね。」

結局閉園時間までお土産などを物色して帰路に着く二人は、華やかなイルミネーションに彩られたデジャヴーランドに別れを告げて夜の電車で都内へと帰っていく。

二人が乗る電車には同じくデジャヴーランド帰りの人が多く、中にはイチャイチャしながらこの後の予定を話していたりする人もいて二人も少し意識してしまう。

まあ疲れたサラリーマンのおっさんなども居るので完全にそんな空気でもないのだが。


「流石に今日の外泊は無理ですわ。」

ただそんなバカップルにあてられたのか何とも言えない表情で外泊は無理だとかおりが独り言のようにこぼすと、横島はちょっとは期待していたのかあからさまに動揺してむせたようにゴホゴホと咳き込んでいた。

本音を言えばいろいろ恋人らしい関係を期待してしまう部分も当然あるし、元々理性なんてものに自信のない横島はかおりに対して自ら壁を作っていたがそれをかおりによって崩されてしまった訳だし。


「分かってますって。」

そんなあからさまな動揺をする横島であるが確か以前雪之丞とはキスもしてないと言ってたなと思い出して、かおりの性格上いろいろ期待するのは当分お預けだと自身に言い聞かせるように心の中で何度も呟いて最低限嫌われないようにと考えていたが。


「やっぱり期待してました?」

「えーと、その……。 アハハハハ。」

現状ではどちらかと言えば告白したかおりの方が心構えや覚悟は出来てるのかもしれない。

あからさまに動揺したまま笑って誤魔化す横島に、ついかおりも笑ってしまいそのまま寄り掛かるように身を預ける。

流石に今日すぐにとは言えないが別に結婚まで清いままでと考えてる訳でもないので、クリスマスにデートということで万が一ということも考えてそれなりに覚悟はしてきたのだが。

だが横島がそこまで気付くのは永久に無理だろう。

結局この日は何も出来ぬまま二人のクリスマスは終わっていた。




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