その二

午後も数時間過ぎるとデジャヴーランドは更に混雑し始める。

この日はクリスマスということで特別なイベントも多く、恋人達や家族連ればかりではなく純粋なデジャヴーランド好きな女性の友人同士なんかも多い。

横島とかおりは朝から来ているので流石に疲労感もあり比較的激しくない乗り物やアトラクションを回っていて、ちょうど観覧車に乗り込み一息ついていた。


「観覧車なんて何年ぶりだろ。」

横島にとって観覧車は随分久しぶりらしく昔と比べて少し狭く感じるなぁと内部を見渡していたが、かおりはそんな横島に思わず笑ってしまう。

普段の横島はよく言えば素直な子供のような人だなと改めて感じたからだが、この数ヵ月のことをふと思い出すと案外上手くいってると言えるのかなと考え始める。

決して出会いが良かった訳でもないし、見た目がタイプな訳でもない。

しいてあげるならば苦しい時に何の見返りもなく支えてくれたことが好きになった理由なんだろうと思う。

いろいろめんどくさい性格をしていたり未だ自分が知らぬ問題もあるようだが、この人とずっと一緒に居たいと素直に思えるのが現在の本音だった。


「隣いいですか?」

ゆっくりと地上から上がっていく観覧車は外の景色を眺められるとはいえ一応密室である。

狭い密室に二人っきりという空間が落ち着かないのか横島は目の前に座るかおりを見ずに景色を眺めて適当な会話をしていたが、横島が自分を見てくれないことに気付いたかおりは大胆にも隣に移動してしまう。

一応声をかけてから移動したが横島の返事なんて期待してないかおりは半ば強引に隣に移動した。


「弓さん!?」

突然移動したかおりのせいで観覧車は微かに揺れていて、横島は観覧車の揺れに対してかはたまたかおりが横に来たことに対してかは分からぬがあからさまに動揺する。

すでに地上の係員からは見えない位置に来たからか隣に移動したかおりは、大胆にもそのまま横島の手を握り寄り掛かるように横島に身を預けた。

どうせこのまま待っても今日も告白はしてくれないんだろうと思うと体が自然に動いていた。

普通に考えてクリスマスにデートと来れば流石に告白もと少しは期待していたが、観覧車に乗ったくらいで目も合わせてくれない横島には期待出来ないと気付いたらしい。

思えば手を繋ぐのですらやっと慣れた感じのある横島は見た目や普段の態度と違っていざとなれば意気地がない。

何か訳でもあるのかと思わなくもないが、それを聞くよりは行動に出た方が早かった。


「嫌なら嫌と言って下さい。」

「別にそういう訳じゃあ……。」

一方横島は突然隣に来て身を預けるように寄り掛かるかおりに動けないままどうしていいか分からず固まってしまう。

横島にはこんな時に気の効いたことを言うスキルも無ければ何かする勇気もない。

ルシオラの時を始め過去もそうだったが基本的に横島は自分が百パーセント確信が持てる場合や、ギャグや冗談で乗りきれる雰囲気でもなければ何も出来なかった。

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