その二

「少し早いけどそろそろお昼にしましょうか? 完全にお昼に食べると混みそうですし。」

「そうですわね。」

さて価値観が噛み合わないこともある二人であるが、なんだなんだ言いつつ楽しげでありそのまま何個かアトラクションを楽しむと少し早いが混雑する前に昼食にすることにした。

園内にはレストランや軽食の店が幾つもあり横島とかおりはパンフレットを見ながら選ぶが、パンフレットは一枚しか貰ってないので必然的に二人で見るには吐息を感じるほどの距離となる。

双方ともにそれをあえて指摘して騒がない程度に関係が深まったのはいいが、横島はやはり顔が近いことを意識しすぎるらしく緊張したように固まっているが。


「はーい、お待たせしました。 マッキー&マニーランチです。」

結局二人はかおりの要望でマニーキャットの店というかつて令子が着ていた着ぐるみのキャラの店で昼食を食べることにしていて、これまたかおりが食べたいと言ったカップルにオススメと書かれていたマッキー&マニーランチを頼む。


「これは流石にあかんやろ……。」

「わたしは構いませんわ。」

しかしそれは料理自体はお皿の形がデジャヴーランドのキャラになっていたりするものの美味しそうでいいのだが、横島は一緒に来た飲み物を見て固まってしまいかおりは顔を真っ赤にする。

それというのも飲み物は一つのコップにストローが二つ入っていたのだ。

しかもそのストローは俗に言うカップルストローというハートの形をした二つのストローが絡まった物なのである。


「でもさぁ。」

ぶっちゃけ横島とかおりにはかなり難易度の高いアイテムであるが、周りの席はほとんどカップルばっかりで恥ずかしげもなくイチャイチャしながらそのストローを使っていた。

実はここのレストランは男女のペア専用レストランでかおりが来る前から横島をここに連れてこようと、ずっと考えていた店だったりする。

ここでマッキー&マニーランチを食べると結ばれるという噂があるとかおりが見た女性向け雑誌に書いていたらしい。


「美味しいですわね。」

もうここまで来ると恥ずかしいとか通り越してしまった横島は、結局流されるままカップルストロで飲み物を飲むことになってしまう。

一方のかおりは相変わらず顔が赤いようではあったが、もう横島は待っていても無駄だと悟ったらしく自分からアプローチをしかける気なのかもしれない。

ちなみに写真撮影サービスがあり、カップルストローを使ってる姿を写真に撮影してもらうと完全にバカップルそのものであったが。


「世の中のカップルはこんなことしてるのかぁ。」

「こういうの、夢だったんです。」

自分のキャラじゃないなと思う横島はここでボケたらどうなるんだろうと半ば他人事のように考えていたが 、あまりに嬉しそうなかおりにそれも出来ずにただ見つめるしか出来ない。

ただ化粧のせいか今日のかおりはいつもより大人の色気のようなものがあり、ルージュの唇を見ていると思わずムラムラと彼女を自分のモノにしたいという想いが膨れ上がってしまう。

ある意味それは少し段階を飛び越えてはいるものかおりの望む形なのかもしれないが、臆病でヘタレな横島は自分の感情や欲望が今まで散々叩かれて来たので嫌われたくない一心で抑え込んでしまうが。

結局横島は愛と恋と欲を上手く表現出来ないままであった。


18/100ページ
スキ