その一

「もう、横島さんもそんなこと言わないで下さい!」

あっさりと行かないと告げる横島に、最初に反応したのはおキヌであり結構怒っている。

横島とすればいろいろ面倒なので参加するメリットは薄いが、おキヌは横島に参加して貰わねば困るのだ。


「そうですよ。 雪之丞も来るかわかりませんし、横島さんまで来ないとなると厳しいですよ」

そんなおキヌに続きピートも引き止めに加わる。

はっきりとは言えないが、このメンバーで横島に抜けられるとピートとしては少し辛い。

実のところピートはかおりや魔理の正確な実力を知らないし、正式なGS免許を持つのが自分一人なのは負担が大きすぎると考えている。


「人数が多ければいいって訳じゃないだろ。 一文字さんも弓さんも俺が参加するの反対みたいだし今回は止めとくよ」

一人だけ利点が少ない上にリスクが大きい横島は早々に逃げに入っていた。


「あら、私がいつ反対しました? 勝手に私の意見を決めないでくださる」

横島は食べ終えたカップラーメンの器を持ちそのまま立ち上がり逃げようとするが、それを止めたのは意外にも不機嫌そうな表情のかおりだった。

横島もおキヌ達もまさかここでかおりが横島を止めるとは思わず驚くが、かおりは不機嫌そうに横島を見つめるだけである。


「私は貴方のGSとしての実力を否定した覚えはありませんし、貴方の参加に否定的な意見を言った覚えもありませんが」

「弓、お前どうしたんだ?」

驚き戸惑う横島やおキヌと同じく、魔理も信じられないような表情でかおりを見つめた。

一ヶ月前の件もあるかおりがまさか横島を止めるとは思わなかったし、基本的に他人を頼ることを嫌う性格なだけにその真意が分からない。


「冷静に実力と経験を考えれば当然の選択です。 個人的な感情や好き嫌いとは別の問題ですから。 それと免許もなく学校外での除霊経験もない貴女が、何故美神お姉さまが決めた人員に口出しするのですか?」

横島を不機嫌そうに見つめながらもキッパリと言い切るかおりに、横島は逃げるタイミングを失ってしまう。

ただ平然と語るかおりも内心では突然横島が参加しないと言い出して、かなり焦っていたが。

以前の横島との関係から不自然ではないように横島を引き止めるには、横島に特に冷たくしながら論点を横島から令子に変えるしかない。

一見すると令子の決めたことに口出しする魔理に怒りを向けてるかおりだが、実際には余計なことを言って横島の機嫌を損ねた魔理に怒りを感じている。

そもそも雪之丞が来るかもしれない今回の除霊に、横島が来ないのはかおりとしては不安だった。

結局逃げ時を逃がした横島は参加することになるが、魔理は相変わらず納得がいかない表情だしかおりもどこか不機嫌そうなのだから横島は気が重いとしか感じなかった。

最終的にこの日は雪之丞と連絡が取れる可能性を信じて一週間ほど様子を見ることで収めるが、除霊に行く前から波乱に満ちていた。



11/100ページ
スキ