その二
「それで弓さんどうしたいんだ?」
「私は今すぐに寺を継ぐというのは正直考えられません。 将来的に継ぐとしてもどのような形でどう受け継ぐかは話し合い決めたいと言うのが本音です。 ですが……。」
そのあと脱線した話はかおりの現状と今後に戻る。
問題の本質は家族の価値観の違いだが、まず決めねばならないのはかおりが家や寺をどうしたいかであろう。
実のところかおりも継がないとは言ってなく、継ぐならば世の中を学んで自らの価値観で寺を継ぎたいのだ。
とりあえず現状でも寺と家は明確に区別するべきだと思ってるし、寺としての本分と霊能者としての本分も区別するべきだとは思っている。
基本的に非宗教系GSは明確な仕事なので普通に除霊料金となるが、闘竜寺では長年の慣習から料金ではなくお布施という形で除霊料金を頂いていた。
これには税金の問題もあり一概に悪いとは言えないが、一般的なGSの相場よりはかなり安くお布施なため明確な基準があってないような状態であることが弓家の負担になっている。
まあこれが檀家ならばまだいいが、除霊の大半は檀家や近隣住人からの紹介による寺とは関係のない除霊ばかりなのだ。
かおりの父が人格者として評判なのは少額なお布施で除霊を引き受けるからという事情もあるが、GSも一部の例外を除いてそんなに丸儲けではないのでしわ寄せは寺や家に来てしまう。
まして闘竜寺はオカルト業界でそれなりに古い歴史があり地位もあるので全国から弟子が集まるが、そんな弟子達を食わせていかねばならない。
加えて除霊に使うお札や各種アイテムだって全く使わない訳ではないので、闘竜寺は裕福とは言いがたい。
正直両親が守ってきたという理由以外は継ぎたい理由はないと言っても過言でなかった。
「話し合いも出来ん親父さんじゃ、いいなりになるか家出するか二者択一しかなかったってか。 仏様のことだろ? 小竜姫様にでも仲介頼むか?」
「そっ、そんな恐れ多いこと出来ませんわ!」
結局話し合いも出来ず家出するしか方法がなかったと言われると横島に妙案など浮かぶはずもなく、そんなに神様が好きなら小竜姫に仲介を頼む方がいいと割と本気で口にする。
しかし家庭の問題で神族に仲介を頼むなど流石に恐れ多くて冗談ではないと、かおりは本気で出来ないと言い切った。
「ならしばらく様子見るしかないんじゃないか? 下手な第三者に仲介を頼むと騒ぎが大きくなって引っ込みがつかなくなるし。 もし寺が人手に渡るのが嫌じゃないんならな。 ぶっちゃけ弓さんが自分で理想の寺でも新しく建てた方がいい気もしないでもない。」
横島としては小竜姫に頼めないなら本当にこれ以上の策はなく様子見しか思い浮かばないが、最後にとんでもないことを口にしてかおりを唖然とさせる。
「私が寺を建てる?」
「これも人からの又聞きで悪いんだけど唐巣神父って、正式には破門されてるからちゃんとした神父じゃないんだと。 でも自分で教会持って好きにやってるしさ。 もし弓さんが理想の寺やGSをやりたいなら自分で建てちゃえばいいんじゃないかと思ってな。 なんなら唐巣神父にその辺りの話聞きに行くか?」
自分で寺を建てるという普通の宗教家には思い付かないようなとんでもない横島の話にかおりは衝撃を受けてしまうが、横島は横島なりに唐巣という前例を思いだし似たようなことを寺でも出来るんではと思う。
それは伝統ある寺で生まれ育ったかおりにはない考えであり、実際には横島が言うほど簡単ではない。
ただ話し合いも出来ない父に自分の考えを理解させるには、案外それしか方法がないような気がしないでもなかった。
まあ現状ではしばらく成り行きを見守るのが最善ではあるが、かおりとしては何がなんでも闘竜寺を継ぎたい訳でもないし最終的には維持費だけでも大変な寺が人手に渡ろうとも構わないのが本音にある。
横島が語るように霊能者として自分はどうしたいのか、今一度母と話し合いゆっくり考えるべきだと気付いただけでこの日横島に相談して良かったとかおりは思うことになる。
「私は今すぐに寺を継ぐというのは正直考えられません。 将来的に継ぐとしてもどのような形でどう受け継ぐかは話し合い決めたいと言うのが本音です。 ですが……。」
そのあと脱線した話はかおりの現状と今後に戻る。
問題の本質は家族の価値観の違いだが、まず決めねばならないのはかおりが家や寺をどうしたいかであろう。
実のところかおりも継がないとは言ってなく、継ぐならば世の中を学んで自らの価値観で寺を継ぎたいのだ。
とりあえず現状でも寺と家は明確に区別するべきだと思ってるし、寺としての本分と霊能者としての本分も区別するべきだとは思っている。
基本的に非宗教系GSは明確な仕事なので普通に除霊料金となるが、闘竜寺では長年の慣習から料金ではなくお布施という形で除霊料金を頂いていた。
これには税金の問題もあり一概に悪いとは言えないが、一般的なGSの相場よりはかなり安くお布施なため明確な基準があってないような状態であることが弓家の負担になっている。
まあこれが檀家ならばまだいいが、除霊の大半は檀家や近隣住人からの紹介による寺とは関係のない除霊ばかりなのだ。
かおりの父が人格者として評判なのは少額なお布施で除霊を引き受けるからという事情もあるが、GSも一部の例外を除いてそんなに丸儲けではないのでしわ寄せは寺や家に来てしまう。
まして闘竜寺はオカルト業界でそれなりに古い歴史があり地位もあるので全国から弟子が集まるが、そんな弟子達を食わせていかねばならない。
加えて除霊に使うお札や各種アイテムだって全く使わない訳ではないので、闘竜寺は裕福とは言いがたい。
正直両親が守ってきたという理由以外は継ぎたい理由はないと言っても過言でなかった。
「話し合いも出来ん親父さんじゃ、いいなりになるか家出するか二者択一しかなかったってか。 仏様のことだろ? 小竜姫様にでも仲介頼むか?」
「そっ、そんな恐れ多いこと出来ませんわ!」
結局話し合いも出来ず家出するしか方法がなかったと言われると横島に妙案など浮かぶはずもなく、そんなに神様が好きなら小竜姫に仲介を頼む方がいいと割と本気で口にする。
しかし家庭の問題で神族に仲介を頼むなど流石に恐れ多くて冗談ではないと、かおりは本気で出来ないと言い切った。
「ならしばらく様子見るしかないんじゃないか? 下手な第三者に仲介を頼むと騒ぎが大きくなって引っ込みがつかなくなるし。 もし寺が人手に渡るのが嫌じゃないんならな。 ぶっちゃけ弓さんが自分で理想の寺でも新しく建てた方がいい気もしないでもない。」
横島としては小竜姫に頼めないなら本当にこれ以上の策はなく様子見しか思い浮かばないが、最後にとんでもないことを口にしてかおりを唖然とさせる。
「私が寺を建てる?」
「これも人からの又聞きで悪いんだけど唐巣神父って、正式には破門されてるからちゃんとした神父じゃないんだと。 でも自分で教会持って好きにやってるしさ。 もし弓さんが理想の寺やGSをやりたいなら自分で建てちゃえばいいんじゃないかと思ってな。 なんなら唐巣神父にその辺りの話聞きに行くか?」
自分で寺を建てるという普通の宗教家には思い付かないようなとんでもない横島の話にかおりは衝撃を受けてしまうが、横島は横島なりに唐巣という前例を思いだし似たようなことを寺でも出来るんではと思う。
それは伝統ある寺で生まれ育ったかおりにはない考えであり、実際には横島が言うほど簡単ではない。
ただ話し合いも出来ない父に自分の考えを理解させるには、案外それしか方法がないような気がしないでもなかった。
まあ現状ではしばらく成り行きを見守るのが最善ではあるが、かおりとしては何がなんでも闘竜寺を継ぎたい訳でもないし最終的には維持費だけでも大変な寺が人手に渡ろうとも構わないのが本音にある。
横島が語るように霊能者として自分はどうしたいのか、今一度母と話し合いゆっくり考えるべきだと気付いただけでこの日横島に相談して良かったとかおりは思うことになる。