その二
「学生が恋をして何が悪いのですか! アナタはいつもそう。 私やかおりの気持ちは聞いてくれないで自分の価値観を押し付けてばかり!!」
同じ日弓家ではちょっとしたトラブルというか修羅場が起きていた。
学校が終わり帰宅したかおりはクリスマスに友人と出掛けるからと母に伝えて洋服やプレゼントをどうしようかと話していたのだが、偶然それを聞いた父が突然怒り出したのだ。
闘竜寺の跡取りとしてそんなことにうつつを抜かすとは何事だと怒鳴ったのをキッカケに父と母が口論している。
横島と会うようになってから不満を募らせていた父を母が押さえていたのだがとうとう爆発したらしい。
「おまえがそうやって甘やかすからかおりは修行にも身が入らずに男になどうつつを抜かすのだ!」
「何度も言ってるじゃありませんか。 かおりの人生はかおりのものです! 世の中も知らずに恋愛も知らない娘に人など救えるはずはありません!」
根本的な価値観が違う両親は互いに互いの主張を繰り返すだけで一向に歩みよりもないままだが、これは今までに何度も繰り返されてきた言い争いだった。
「それほど寺が大事ならまずはご自分が本来の戒律を守り開祖の残した伝統を全て踏襲して下さい!」
「もういい、出ていけ!」
ただやはり男性であり寡黙なタイプの父では口では母に勝てずに、最終的には黙るか出ていけと怒鳴るかのどちらかでしかない。
女は黙って従えばいいんだという価値観の父にとって母の行動は許せるものではなく、何かにつけて自分に口答えする母には以前から不満を溜め込んでいたのだろう。
実は出ていけと怒鳴るのは昔からで母はずっと我慢してきたという過去がある。
元々かおりの祖父も昔気質の人で父以上に男尊女卑の人だったので父はそんな家庭しか知らないという事情もあった。
「あえて言いませんでしたが前々から思ってました。 気に入らないと怒鳴るアナタに見仏に仕える資格があるのかと。 何が慈悲ですか。 何が仏の道ですか。 よそ様には理解あるフリをしても妻と子でさえ説得出来ないアナタに何が出来るのですか? もういいです。 出ていけというなら出ていきます。 アナタは一人で寺と共に生きて下さい。」
そして爆発したのは父ばかりではなく母も同じらしく母は売り言葉に買い言葉といった様子で出ていくと告げると、かおりに当面必要な荷物を纏めるように告げると自身も必要な荷物を纏め始める。
この頃になると闘竜寺の住み込みの弟子達も夫婦の喧嘩に気付き止めに入っていたが、かおりは正直父の言い分を理解できなかったので静観していた。
闘竜寺を継ぐというのも考えてない訳ではないが、何かにつけて寺や仏の名前を出す父にはうんざりもしている。
そもそも母も闘竜寺を継がなくていいと言ってる訳ではなく世の中を見てよく考えなさいと言ってるだけだったのだ。
元々霊能の師匠としては尊敬しても父としては尊敬出来ないだけに、両親の喧嘩には母の言い分の方が理解できる。
結局かおりは出ていくという母と共に幾ばくかの荷物を持ち家を出ることになってしまう。
この先どうなるか不安はあったが自分を理解してくれる母に着かないという選択肢はないし、父の人形のような人生はごめんであった。
同じ日弓家ではちょっとしたトラブルというか修羅場が起きていた。
学校が終わり帰宅したかおりはクリスマスに友人と出掛けるからと母に伝えて洋服やプレゼントをどうしようかと話していたのだが、偶然それを聞いた父が突然怒り出したのだ。
闘竜寺の跡取りとしてそんなことにうつつを抜かすとは何事だと怒鳴ったのをキッカケに父と母が口論している。
横島と会うようになってから不満を募らせていた父を母が押さえていたのだがとうとう爆発したらしい。
「おまえがそうやって甘やかすからかおりは修行にも身が入らずに男になどうつつを抜かすのだ!」
「何度も言ってるじゃありませんか。 かおりの人生はかおりのものです! 世の中も知らずに恋愛も知らない娘に人など救えるはずはありません!」
根本的な価値観が違う両親は互いに互いの主張を繰り返すだけで一向に歩みよりもないままだが、これは今までに何度も繰り返されてきた言い争いだった。
「それほど寺が大事ならまずはご自分が本来の戒律を守り開祖の残した伝統を全て踏襲して下さい!」
「もういい、出ていけ!」
ただやはり男性であり寡黙なタイプの父では口では母に勝てずに、最終的には黙るか出ていけと怒鳴るかのどちらかでしかない。
女は黙って従えばいいんだという価値観の父にとって母の行動は許せるものではなく、何かにつけて自分に口答えする母には以前から不満を溜め込んでいたのだろう。
実は出ていけと怒鳴るのは昔からで母はずっと我慢してきたという過去がある。
元々かおりの祖父も昔気質の人で父以上に男尊女卑の人だったので父はそんな家庭しか知らないという事情もあった。
「あえて言いませんでしたが前々から思ってました。 気に入らないと怒鳴るアナタに見仏に仕える資格があるのかと。 何が慈悲ですか。 何が仏の道ですか。 よそ様には理解あるフリをしても妻と子でさえ説得出来ないアナタに何が出来るのですか? もういいです。 出ていけというなら出ていきます。 アナタは一人で寺と共に生きて下さい。」
そして爆発したのは父ばかりではなく母も同じらしく母は売り言葉に買い言葉といった様子で出ていくと告げると、かおりに当面必要な荷物を纏めるように告げると自身も必要な荷物を纏め始める。
この頃になると闘竜寺の住み込みの弟子達も夫婦の喧嘩に気付き止めに入っていたが、かおりは正直父の言い分を理解できなかったので静観していた。
闘竜寺を継ぐというのも考えてない訳ではないが、何かにつけて寺や仏の名前を出す父にはうんざりもしている。
そもそも母も闘竜寺を継がなくていいと言ってる訳ではなく世の中を見てよく考えなさいと言ってるだけだったのだ。
元々霊能の師匠としては尊敬しても父としては尊敬出来ないだけに、両親の喧嘩には母の言い分の方が理解できる。
結局かおりは出ていくという母と共に幾ばくかの荷物を持ち家を出ることになってしまう。
この先どうなるか不安はあったが自分を理解してくれる母に着かないという選択肢はないし、父の人形のような人生はごめんであった。