その一

「二十万か~ やっぱりGSは儲かるんだな」

「それは全て上手く行けばでしょう。 それほど甘くはないですわよ」

今回の依頼に一番乗り気で楽観的なのはやはり魔理だった。

二十万は普通の高校生のアルバイト代と比べると破格なので彼女は当然テンションがあがるが、そんな魔理にかおりは冷たい口調で水を差す。


「相変わらずイヤミな奴だな。 始めから失敗すること考えてどうするんだよ」

「学校の実習と実際の除霊を一緒にしないで下さい。 実際の除霊は貴方が考えてるより遥かに危険なんです。 もしミスを犯したら死ぬ可能性もありますし、美神お姉さまに多大な迷惑をかけます」

かおりと魔理の考え方というか価値観の違いが、始めからぶつかっていた。

そもそもポジティブに考えやる気を出す魔理に対して、経験豊富なかおりは慎重なのである。

どちらが正しいとは一概には言えないが、問題はこのメンバーが集まると明確なリーダーがいないことかもしれない。


「まあまあ、弓さんも一文字さんも落ち着いて話し合いましょうよ」

今のところはおキヌがまとめ役になっているが、優しい分だけ優柔不断さもあるおキヌではかおりと魔理を完全に纏めることは出来てない。


「雪之丞は来ないんですか?」

「さあな、ちょっと前に香港に行くって連絡あってから連絡取れないから知らん」

一方横島はといえばズルズルとカップラーメンを食べつつ、羨ましそうに見つめるタイガーをスルーしてピートの問い掛けに答えていた。

日頃から来る時は突然やって来る雪之丞は携帯電話など持たないので、なかなか連絡が取れない相手である。

実は一時期携帯電話を持っていたらしいが、一ヶ月で三回壊して以降持つのを止めたという事情があった。

相変わらずヘビーな人生を送ってるらしい。


「ところでさ、本当にあいつも連れて行くのか?」

かおりにやる気を削がれた魔理は、やる気の全く見えない横島に対し更に苛立ちを募らせる。

あからさまに軽蔑した視線を横島に向けると、聞こえることを隠そうともせずに不快そうな表情でおキヌに不満をぶつけた。


「横島さんは除霊経験が長いので大丈夫ですよ」

明らかに横島を邪魔だといいたげな魔理におキヌは困ったようにフォローするが、言葉で魔理の横島に対する評価が変わるはずもない。

そんな魔理とおキヌを見て心を痛めていたのは、やはりポーカーフェースを装うかおりだった。

魔理の横島に対する評価は元々低かったが、友人の彼女にちょっかいを出したとの一ヶ月ほど前の噂以降は更に嫌悪感を隠さなくなっている。


「もしかして俺って邪魔者? なら俺は遠慮するよ。 正直失敗すると後が恐そうだしな」

そして隠そうともしない魔理の発言に対し横島は、あっさりとした表情で参加しないと言い切る。

はっきり言うと横島は今回の除霊にあまり乗り気ではない。

どうせ横島には成功報酬は無いだろうし時給も変わらないのに、もし失敗すれば後々令子に一番怒られるのは横島なのだ。

令子が行けと言うなら行くが、もしかおりや魔理が邪魔だと言うならちょうどいい断る理由になる。



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