嵐を呼ぶかもしれない男

「一難去ってまた一難ですか。」

一方小竜姫はこの頃ヒャクメと一緒に事務所の仕事の傍らでメドーサと死津喪比女の監視をしていたが、正直なところ動きたくても動けぬ状況が続いている。

香港ではすでに風水師に犠牲者が出始めているが下手に動いて事態を悪化させるのだけは避けねばならないし、死津喪比女に関してはほとんど正確な未来の情報を知らないことで更に動けなくなっていた。


「この人達もかなり問題なのね。」

そして地下鉄の事件のあとにはヒャクメが南部グループを軽く調査したが、あいにく事件との関わりまでは調べられてないが心霊兵器の開発で取り分け魔族の細胞から人造魔族の開発がかなり進んでいることは神界と魔界が動きかねない事態である。


「確かその人間達は未来において人間の裁判が終わり刑期を終えたあとに魔族の正規軍が連行したはずです。 表向きは失踪したことになったらしいですが。」

実際小竜姫は南部グループの事件のその後だけは神魔に関わる部分だけはそれなりに覚えていて、開発陣と経営陣は人間の裁判と刑期を終えたあとに密かに魔界に連行され裁かれ最終的には魂を転生させずに永久に苦痛を与え続けるという死より重い罰を受けたことを記憶していた。

オリジナルのガルーダを筆頭に魔族の怒りがそれだけ酷かったことと、神族ですら激怒して見捨てたという厳しい結末だったのだ。

敵対してるとはいえ魔族には神族だった者も居るし、彼らが人造神族の研究もしていたことが神族を激怒させた原因になる。


「人造魔族の試作もしてるし、捉えてきた妖怪達を実験台にして非道なこともしてるわ。 最早許せるものじゃないのネ!」

「とはいえ今神族が彼らを捉えても人間社会的には心霊兵器は無かったことにされる可能性が。 無念ですが彼らを人間社会として罰して潰した後に神族か魔族が動く方が他への見せしめになるでしょう。」

そして問題なのは心霊兵器の開発は何も南部グループだけではないことだろう。

国家から企業にゲリラまで程度の違いはあれど手を出してる者達は他にもいる。

無論南部グループはやり過ぎていたことも確かだが。


「もう少し調査してください。 地下鉄の事件との関わりさえあればオカルトGメンを使って南部グループを潰してから神魔が裁く形にしましょう。 彼らには安息な未来や新たな転生など絶対に与えません。」

どのみち南部グループは最早神魔が許せる範囲を逸脱していて遅かれ早かれ彼らは未来と似たような結末に至るだろう。

小竜姫としては変わりゆく歴史の中で、こちらもまた朧気でしかない歴史知識をどう生かして未来と同じかそれ以上の結末にするかで悩むことになる。

当然南部グループには僅かな慈悲すら与える気はなく、いかにして彼らの危険な研究を完全に潰すか考えていく。

人を愛し人と神の狭間を生きる小竜姫とて、やはり神としての誇りも使命もある。

この手の人間は絶対に許さないと誓い南部グループの運命を決定付けていた。

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