嵐を呼ぶかもしれない男

「あと一週間で一ヶ月か。 本当に助かったよ。」

令子のオカルトGメン出向は三週間が過ぎようとしていた。

小竜姫の未来では割と早く潰れた令子だが、この世界では横島との関係も変わり小竜姫や雪之丞も居ることでストレスを抱えながらもなんとか続けることが出来ている。

ただ地下鉄での事件以降は西条も令子の向き不向きを理解したらしく、令子には極力現場で除霊をしてもらうことに専念してもらい事務や折衝にマスコミの対応など裏方は西条が行うことで令子のストレスを減らしたという理由もあった。


「ううん。 西条さんと仕事が出来て私も良かったわ。」

「少し惜しいが令子ちゃんはGSに戻った方がいいだろう。 弟子もいつまでも放置しておけないだろうし、君は人を使うより自ら除霊する方が似合ってる。」

「そうね。 私もそう思うわ。」

出向も残り一週間となり今後の話を少しずつ考えていた二人だが、西条は当初の約束通り一ヶ月で令子をGSに戻すべきだと決断している。

オカルトGメン開設一ヶ月を令子のような優秀なGSに手伝ってもらって西条としても格好がついたし願わくばこれからもと思わなくもないが、令子の性格や能力を考慮するとオカルトGメンでは生かしきれないと判断したらしい。

それに小竜姫もいつまでも放置しておけないし、小竜姫の影響か人間離れしつつある横島と雪之丞も人間の師匠が必要なのを西条は地下鉄の一件でよく理解した。


「これからは個別に必要に応じて頼みたい。 どのみちオカルトGメンは当面はGSの協力が無ければ何も出来ないからね。 令子ちゃんがその先駆けとなってくれたらこれ以上ないほど助かるんだ。」

「ええ、可能な限り手伝うわ。 正直地下鉄の時みたいな感じが一番ベストだと思うわね。」

流石に三週間も一緒に居ると西条は令子との価値観がだいぶ違うことを理解していて、令子には社会に対する奉仕の精神も見知らぬ人々に対する情もあまりないことを気付いている。

美智恵を早くに亡くし父親とあまり上手くいってなかったことを知っている西条としては、令子が人間関係で苦労したのだろうと同情していて自分がこれからは支えてやらねばと少し誤解も含みつつ考えていたりするが。


「そうだ、今日はこのまま上がって食事に行こうか?」

「じゃあ、マンションに寄ってくれる? 食事に行くなら流石に着替えたいわ。」

そして令子に関しては本来の歴史より西条に心を開きつつあった。

少しずつワガママを言えるようになっているし、やはり西条は憧れの人であり異性としては父親との関係が悪い分だけ父や兄のような存在でもあるのだ。

加えてオカルトGメン出向以降は小竜姫に愚痴をこぼすことでなんとか頑張って来た令子だが、愚痴と共に小竜姫の横島に対するあまりにも強くまっすぐな想いも聞いていて小竜姫と横島の関係を認め応援しようと考え始めたことも大きい。

別に小竜姫と横島に触発された訳ではないのだろうが、令子とて年頃であり恋人も欲しければ支えてくれる人も欲しい。

価値観は違うが自分を理解していてくれようとする憧れの人に心惹かれ始めたのは自然なことだった。


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