嵐を呼ぶかもしれない男

一行が降りたのは工事関係者用の地下への入り口だった。

慌てて逃げたのか悪霊が暴れたのか地下は工事用の道具などが散乱しているも、明かりは付いているので暗いというほどでもない。

幸いなのは悪霊が弱く除霊をするのが簡単なことであるが、やはり数が多くて鬱陶しい。


「何か良からぬ気配がしますね。 少し気を付けた方がいいかもしれません。」

しばらく進むと悪霊の発生源が近付いてくるが小竜姫は何やら不穏な気配を感じ警告を発する。

だがここで止まる訳にはいかずに一行は慎重に進むが。


「横島さん! 西条さんを!!」

「小竜姫様!?」

それは突然起こった。

まだ現場までは少し距離があり地下鉄のトンネルとして完成していた区域を進んでいた一行を突然の落盤が襲う。

まるで待っていたかのように真上から落ちてくるコンクリートや土砂に小竜姫は瞬時に全員の位置を見極めると自身が令子と雪之丞を抱えて後方に退避していて、横島は小竜姫の声に反応するように竜装術を展開すると西条の腕を掴み前方へと飛んだ。


「小竜姫様! 小竜姫様! 無事っすか!?」

「落ち着きたまえ。 小竜姫様は令子ちゃん達を連れて退避したのが見えた。 だが離れ離れになってしまったな。」

落盤はおよそ数メートルに渡り起きていて横島達のとこれからは小竜姫達の姿も声も届かなく、横島は顔色を真っ青にして落盤の向こうの小竜姫に声をかけるも西条は小竜姫が令子と雪之丞を連れて退避したのを見ていたので冷静だった。

ただ西条は令子から聞いて話としては知っていた横島の竜装術を見てそちらに驚き、まさか見習いに助けられるとはと少し複雑そうな表情をする。


「まさか閉じ込められたのか!?」

「いや、工事区域の出口は三ヶ所あるし関係者用の避難所もあるから閉じ込められてはいない。 だが令子ちゃん達との合流は一旦地上に出ないと無理なのが……。」

「横島、西条殿。 この先に先ほどから様子を伺うような人の気配があるのだが。」

最近は小竜姫の影響で多少しっかりして来た横島だが小竜姫から離れるとメッキが剥がれるように閉じ込められたのかとオロオロとするが、西条はそんな横島を落ち着かせつつこれからの行動を考える。

しかしその時、横島のバンダナの心眼が開くと横島と西条が気付いてない人の気配があると伝えていた。


「離れてしまいましたね。 さてどうしますか。 工事関係者の避難は終わったはずですよね?」

一方小竜姫達の方だがこちらは令子も雪之丞も慌てることはないし、小竜姫も当然ながら落ち着いていて今後のことを考えていた。

横島達が無事なのは小竜姫も見えていてすぐに瞬間移動で合流をしようかと一瞬考えるも、心眼が気付いたように小竜姫もまた人の気配に気付いている。


「ええ、避難してるはずよ。 誰か居たの?」

「落盤の先に人間の気配がしました。 どうやらただの霊障ではないのかもしれません。 私達は一旦地上に戻り、別の入り口から再度地下に来た方がいいかもしれません。」

何が起きているのか正直小竜姫にも分からないが落盤といい人の気配といいただの霊障ではない可能性がある以上、合流するよりは回り込んだ方がいいと小竜姫は判断した。



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