嵐を呼ぶかもしれない男

「凄いですねヒャクメ様!」

「調査官の名は伊達じゃないのね! 人界のことに関しては小竜姫よりずっと詳しいのよ。」

令子のオカルトGメン出向から三日が過ぎていたがヒャクメは霊障を抱える企業や金持ちを自ら探して回り仕事を取ってきていて、ここ二日ほどは忙しくなり横島もお昼で学校を早退して精力的に除霊をこなしている。

美神事務所の名前とヒャクメの調査能力に加え相手の心まで読めるとなると、あっさりと大口の依頼を獲得してきておキヌや横島を驚かせていたのだ。

元々神族の調査官として情報収集はお手のものであるし、霊障物件などを調べそこから持ち主までたどり着くなど簡単なことだった。

そこで正体を隠し営業マンとして物件の持ち主と交渉し仕事を獲得しているのだが、一癖も二癖もある神族よりは交渉しやすいのは言うまでもないし単純に小竜姫や横島達と一緒に仕事をすることをやはり楽しんでもいる。


「……営業って大事なんだな。」

「一流になれば仕事はある程度向こうから来るようですよ。 ただ私達は一ヶ月しかありませんから。 こちらから動きませんと。」

そして意外なことにヒャクメの活躍に驚き感心したのは、横島やおキヌばかりでなく雪之丞も同様だった。

強くなることが最優先である雪之丞も、別に霞を食ってる訳でもないし極論を言えばGSとして成功したいしお金だって欲しい。

ただ不器用な雪之丞は強くなることを最優先していただけなのだが、神族で文官で戦う力がたいしたことないにも関わらず営業でバンバン仕事を取ってくるヒャクメが凄いのは理解する。

まあ令子からもGSとして成功するには社会人としてのスキルが必要だと言われているので理解していたつもりだったが、改めてこうして成果を見せられるとそれを身をもって実感していた。


「ふふ、全て自分でする必要はありませんよ。 信頼の置ける人に任せることも必要です。」

未来ではあまり社会人としてのスキルがなく実力の割に苦労していた雪之丞が、早い時期に戦う以外のことに目を向け始めたことを小竜姫は満足げに見ていた。

無論全て自分でやる必要なんてないし雪之丞にヒャクメのような営業が出来るとは思えない。

しかしまあ重要性を理解しただけでも雪之丞の未来は全く違ったものになると確信している。


「つうか一ヶ月働けば一生遊んで暮らせるんじゃあ……。」

ちなみに横島はこれを期に自分も実力と社会人としてのスキルをと考えずに、一ヶ月頑張ったら小竜姫と慎ましく退廃的な生活でいいんじゃないかとかなり後ろ向きに考えていたが。

流石にメドーサのこととかもあるので修行は続ける必要があるとは考えているが、GSの仕事をしなくてもいいのではと考え始めてしまい小竜姫を少し困らせてしまう。

小竜姫自身も本音ではそれはそれでアリだと思うものの、流石に一人前になる前に引退を考えられるのは困る。


「そう言うのは一人前になって成人してから考えましょう。 別に横島さんに美神さんのように働けとは言いませんから。」

「あー、それもそうっすね。」

結果としてせめて一人前になるまでは頑張って欲しいと頼むと、横島は小竜姫の気持ちを少しは理解したのか恥ずかしげにしながらも納得してやる気を出していた。

相変わらず小市民な横島だがここ三日はやる気を出しているので小竜姫としてもあまり煩く言う気はないらしい。

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