母からの伝言

「そんなに凄い奴に見えんが。」

「冥子だからね。 でも式神使いじゃ天才の家系六道家に勝てる人なんて居ないってことよ。 よく考えたら分かることだったわね。」

最早式神を賭けた果たし合いは流れていて一番ホッとしてるのは他ならぬ冥子であり、やっぱり鬼道にお菓子でもあげて式神を返してくれないかと真剣に悩んでいる。

雪之丞は小竜姫が指摘した霊力差による勝てない理由に今一つ納得してないらしいが、令子はすでに理解して果たし合い自体が一種のデキレースであることを悟っていた。

恐らく母親の冥菜が冥子に少しでも式神使いの自覚を促すために今更必要もない果たし合いを受けたのだろう。


「じゃあ、やっぱりあの人は勝てないんですか?」

「まあね、式神ってのは出してる間は常に霊力を消費し続けるのよ。 しかも十二神将は並の式神じゃないし。 冥子は無意識に霊力を出し続けられるけど、それって難しいのよ。 私も出来ないわね。 影に戻せないって時点で技術より単純な霊力勝負になっちゃうのよ。」

しかし他の横島達は今一つ理解してなく結局令子が小竜姫の言葉の意味を分かりやすく解説することになる。


「勝負を続けますか?」

「いや、僕の負けですわ。 式神は冥子はんに渡します。」

「冥子要らない~。 夜叉丸ちゃんもマー君と一緒に居たいと思うし~。 みんなを返してくれたらそれでいいわ~。」

そして小竜姫は鬼道に勝てないと言った理由を語り果たし合いを続けるか問うが、鬼道にすでに戦意はなくしきたり通り夜叉丸ごと冥子に渡そうとするがやはり冥子は夜叉丸を不要だと返してしまう。


「……冥子はん。」

「ふふ、この違いが貴方が冥子さんに勝てないもう一つの理由ですよ。」

それは鬼道にとって勝負に負けたことより驚きだったのかもしれない。

初めから勝負すらする気のない冥子を馬鹿にしていた鬼道は式神を兄弟や我が子のように思う冥子の式神に対する想いの違いに衝撃を受け、完全に自身の負けを悟ることになる。


「さて今後のことですが、貴方は六道さんの元で修行なり仕事なりしてみては? あの父親ではいろいろ評判も良くないでしょうし貴方が単独で仕事をするのは大変でしょう。 ですが貴方の積み重ねた技術は全てが無駄ではありません。 同じ式神使いの六道さんのところなら生活に困ることはないでしょうし、貴方次第では鬼道家の再興も夢ではないかと。 これを機会に過去のつまらぬ確執は忘れなさい。」

「それは僕の意思より六道さんの気持ちが……。 父さんが散々迷惑をかけたみたいやし。」

「私は構わないわよ~。 小竜姫様の御配慮に感謝します~。」

最後に小竜姫は口を出してしまった以上はと鬼道の今後について言及するが、流石に居候の身では鬼道までは抱えきれないので未来と同じく六道家に丸投げすることにしたらしい。

放っておいても同じ結果になりそうだが、一応神族の自分が仲介してつまらぬ過去を清算させてここで決めた方がいいと判断したようだ。

実際鬼道の実力は普通だが悪いわけでもないし、六道家にしても何代にも渡り厄介な逆恨みしていた鬼道家が軍門に下り自らの下で働くなら悪い話ではないだろう。

正直六道家を超えるなんて一代では無理だし、ここは六道家の下に着いて着実に実力と汚名を返上するのが最適のはずであった。


「小竜姫……さま?」

「ああ、そのことは内密に。 今の私は美神さんのところの居候ですから。」

小竜姫の提案に冥菜はすぐに賛同し鬼道を受け入れることを了承した。

少なくとも六道家に損はないしストーカーのような鬼道家が大人しくなるなら悪いことではない。

そして鬼道は最後の最後に小竜姫の正体を知り唖然とするも、クスッと笑みを溢して秘密だと少女のように語る小竜姫に頷くしか出来なかった。

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