母からの伝言

「勝負あったかしらね。」

「そうですね。 このルールですとあちらの方の負けです。」

さてその後嫌がる冥子を相手に鬼道は一方的に果たし合いを仕掛けると、冥子はアンチラをすぐに奪われプッツンしかけたところで三匹を追加で奪われてしまい六道親子は口喧嘩を始めてしまう。

令子はその姿に勝負あったと口にするが小竜姫はその言葉に同意し頷くと鬼道の負けを告げるが、これには令子の勝負あったという言葉の意味と真逆であり横島達のみならず令子ですら驚き唯一驚いてないのは口喧嘩していたはずの冥菜であった。


「この状況で冥子ちゃん勝てるんっすか?」

「ええギブアップさえしなければ彼女の勝ちでしょう。」

あまりに冷静に断言する小竜姫の言葉に横島は信じられず本当なのかと再確認するも、小竜姫は美味しそうに出されたスイーツを頬張りながら冥子の敗北の条件すら正確に明示してしまう。


「式神のことろくにしらん無知な他人が面白いこと言うてはるな。 この状況でどうやって僕が負けるんや? そもそも十二神将は六道家に相応しくないと思わへんか? ろくに使いこなせへん人間には過ぎたるオモチャや。」

ただそこまではっきり言われると面白くないのは鬼道親子であり、鬼道は小竜姫に視線を向けると令子と違い顔も知らぬ小娘と侮ったのか少し小バカにしたような態度で反論する。


「フフフ。 なかなか面白いことを言いますね。 式神を復讐やら金儲けの道具扱いする貴方達がそちらの冥子さんの式神をオモチャだなんて。 そもそも式神がなんたるかを理解してないのは貴方達の方ですよ。」

鬼道の態度に小竜姫は面白いものを見たと言わんばかりの表情をして食べるのを止めると鬼道と父親の問題点を教え始めるが、その行動に令子はまたなんか仕出かすのかとハラハラし出すし冥菜は冷静にしていたが興味深げに見ていた。


「……なんやと。 ボクはな、夜叉丸を使いこなすために死ぬほど修業をしてきたんや……!! もう二度と女やんかに負けたりせえへんのや!」

小竜姫の言葉は鬼道の怒りを買ったようで、過去に冥子に負けたことや父親の復讐の為に修業を積まされたことなど狂ったように怒り語るが、小竜姫はそんな鬼道に憐れみの視線を向ける。


「憐れな。 式神は人間の道具ではありませんよ。 彼らも命ある存在です。 何故神の名を持つのか考えたことがありますか? そして夜叉丸という式神の気持ちを考えたことがありますか? 他人のことをあれこれ言う前に貴方自身のことをきちんと見直しなさい。」

「ふざけるな! だいたい貴様何もんや!」

最早鬼道の瞳に冥子は移ってなく冥子自身は小竜姫に食って掛かる鬼道を不思議そうに眺めていた。

いくら冥子が天然とはいえ小竜姫に怒るのが筋違いなのは理解するし、もっと言えば神族の小竜姫に食って掛かる鬼道をそんなことしていいのかと若干心配すらしている。

まあ冥子はそんなことよりどうやって鬼道から式神達を返して貰おうかと思案していて、お菓子でもあげれば返してくれないかなと半ば本気で考えていたが。


「私ですか? ちょっとお節介な美神事務所の居候ですよ。」

小竜姫は最近令子に頼まれて竜神の証と言える角を術で隠しているので、鬼道は小竜姫を横島や雪之丞と同じ見習いの霊能者かなんかだと誤解してるらしい。

それ故に強く出れたのだろうが何者かと怒鳴られた小竜姫は正体をこの場で明かすべきか一瞬悩むも、正体を明かして鬼道を怯えさせても彼の為にはならないので誤魔化すことにしたようだ。


「そもそも貴方は自身の霊力で十二神将を扱えると思ってるんですか?」

「当たり前や! ボクは誰よりも修業をして来たんや!」

「先程から修業修業と言いますが、ただ厳しい修業をすればいいというものではありませんよ。 その人の才能や性質に合わせた修業をしないと。 失礼ですが貴方のお父さんは師には向いてるとは私には思えませんね。」

正直言うと小竜姫は鬼道のことには興味がなかったのだが、あまりに可哀想な過去と環境に同情をし始めていた。

妙神山の管理人として人と数は少ないものの向き合い、人の成長を楽しみに修行をつけていた小竜姫なだけにこのままでは良くないと思えてならないらしい。


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